日本は福島原発の大事故から10年を迎える (DW English)

日本は福島原発の大事故から10年を迎える (DW English)







(Japan marks a decade since Fukushima nuclear disaster: DW English)

https://www.dw.com/en/japan-fukushima-nuclear-disaster/a-56825937





アジア





日本は福島原発の大事故から10年を迎える





損壊した原子力発電所廃炉に向けた取り組みは絶望的だと、環境保護諸団体は述べる。一部の地元の人々は、放射性プルームの下にあった村落に戻ることは安全ではないと怖れている。







2021年3月1日、津波によって損壊した福島第1原発の原子炉建屋の近くを作業員たちが歩く





日本は、記録された歴史の中で最も破壊的な自然災害とそれが引き起こした原発事故から10周年を迎える準備をしているが、福島第1原発の事業者は、現地の廃炉に向けた取り組みが予定通りに進んでいることへの自信を表明した。



原発活動家たちはこの立場に批判的であり、メルトダウンに見舞われた原子炉3基の廃炉を完了するための東京電力の計画は「成功の見込みがなく、妄想的」だと主張しており、その一方で、2011年3月に放射能の立ち上った煙の真下の区域で生活していた人々は、自分たちの生活にとって永遠に修復不可能な変化が起きたと述べている。



福島原発の危機は、2011年3月11日の午後に起きたマグニチュード9.1の東日本大震災に続いて発生した。1900年に近代的な記録を取り始めてから世界で4番目に強力な地震が、場所によって40メートルを超える高さに達した一連の津波を引き起こし、日本の東北地方沿岸に襲い掛かった。







2011年3月15日に撮られたスクリーンショットは、福島原発の爆発が示されている





『人々には安全だとか戻れとか言うべきでない』



津波原発の防波堤に穴を開け、このために現地の原子炉建屋6棟のうち4棟の下の部分が浸水し、原子炉の冷却水を循環させるポンプを維持するために必要な非常用発電機が故障した。原子炉3基が炉心の過熱のためにメルトダウンを起こし、4号機の運転は災害時の点検のために停止された。



事故の翌日、政府は周辺の町や村に住む154,000人を上回る人々に避難を命じた。また、1基以上の原子炉格納室が破れて大量の放射線が大気中に放出された場合に備えて、日本北部の広大な帯状の区域からの避難計画が密かに作成された。



福島の事故は現在でもチェルノブイリ事故に次ぐ史上2番目に深刻な原子力事故に分類されているが、このシナリオは発動されなかった。それでも、約18,000テラベクレルの放射性セシウム137が様々な量のストロンチウム・コバルト・ヨウ素などの放射性核種とともに太平洋に放出されたと、専門家たちは推算している。



伊藤延由氏10年前の震災が起きた後、飯舘村近郊の自宅を離れるようにとの当局からの要請を無視した。彼は、自分は既に高齢であり放射線が寿命に影響を与えることはなさそうなので、人間の被験者としての役割を果たすために留まる必要があると主張した。



現在76歳の彼はこの10年間、周囲の丘、自分が栽培している作物、野生の果物・野菜の放射線レベルの測定を続けている。



「彼らは3年前に避難命令を解除し、それからはずっと人々に帰宅を促している」と、彼はDWに語った。「私は事故の時から放射線レベルを記録している。それらは確かに下がっているが、ここの土壌は今後何年も汚染が残るだろう。人々には安全だとか戻れとか言うべきでない。私はそう考えないからだ。」





複雑な廃炉事業



福島の現場の長であり、廃炉事業の最高責任者である小野明氏は今週行われたインタビューで、原子炉を安全にするための作業を2041年から2051年の間に完了するという目標が設定されているが、これを見直す必要はないと述べた。



「私たちは30年から40年で完了させるという目標にこだわり、これに従ってタイムラインと技術・開発計画をまとめるつもりだ」と、彼はAP通信に語った。



それでも、以前に考えられていたよりも遥かに高いレベルのセシウムが、原子炉2基の一次格納室の上部で新たに発見された。これは廃炉作業を一層複雑にするだろう。また、原子炉3基の炉心から格納室の底部に落下した溶融燃料の多くが未発見のままだ。



また、福島規模の廃炉事業はこれまでに試みられたことがなく、一部の分野では作業を完了するための技術が未開発だが、東電はこの取り組みを推進し[投稿者の和訳、3月末までにその取り組みについてロードマップを更新し公表する予定だ。





欺瞞と妄想の10年?



グリーンピース東アジアの原子力専門家ショーン・バーニー氏は、東電の予定表は守られそうにないもので、当局は人々の生命へのリスクを無視し続けていると主張する。



「この10年間の歴代政府は…この原発事故についての作り話を実地に行おうとした」と、彼はDWへの声明の中で述べた。「彼らは、除染プログラムの有効性について偽りを述べたり、放射線物質のリスクを無視したりして日本国民を騙そうとした。」



「同時に、彼らは今世紀半ばまでに福島第1原発の敷地を『開発可能な』状態に戻せるとの主張を続けている」と、彼は述べた。「政府・東電側の欺瞞と妄想の10年は終わらせねばならない。新しい廃炉計画は不可避なのになぜ現在の幻想で時間を更に無駄にするのか?」と、彼は疑念を述べた。



グリーンピースが実施した調査によると、放射性降下物による汚染が最も激しいと認定された840平方km(324.3平方マイル)のうち除染が済んだのは僅か15%であり、一方、避難者が安全に帰宅できると政府が発表した浪江町飯舘村放射線はいまなお安全なレベルを超えている。



バーニー氏は、現地の廃炉のための「アプローチの根本的な再考と新しい計画」が必要だと述べた。グリーンピースは、最も害の少ない選択は核燃料の残骸が「回収された場合」を含め、放射線で汚染された全ての物質を無期限に保管することだと考えている。



「福島第1は既に核廃棄物の長期保管場所になっており、そうあり続けるべきだ」と、彼は締め括った。





発表 2021年3月10日

記者 ジュリアン・ライオール(東京)

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