安倍首相が辞意発表、持病悪化を理由に (BBC NEWS JAPAN)

安倍首相が辞意発表、持病悪化を理由に (BBC NEWS JAPAN)









https://www.bbc.com/japanese/53944124





安倍首相が辞意発表、持病悪化を理由に





2020年8月28日









Reuters

持病の再発を理由に辞任すると発表した安倍首相(28日、首相官邸






安倍晋三首相(65)が28日夕、記者会見を開き、辞意を表明した。持病の潰瘍(かいよう)性大腸炎が再発したと説明し、「国民の負託に自信を持って応えられる状態でなくなった以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではないと判断した」と述べた。



現在の第2次安倍内閣は2012年12月に発足。今月24日には、連続在任期間が歴代最長となったばかりだった。自民党総裁としての任期は2021年9月まで残っていた。



安倍氏は10代のころから、潰瘍性大腸炎を患っていた。2007年の第1次政権でも、潰瘍性大腸炎の悪化を理由に突如辞任した。



安倍氏の辞任を受け、後継の自民党総裁の選出が進められる。安倍氏は会見で後継について、「執行部にお任せしている。私が誰と申し上げることではない」と述べた。





健康不安



安倍氏は会見で、自らの体調について、「8月上旬には潰瘍性大腸炎の再発が確認された」、「投薬の継続的な処方が必要であり予断を許さない」と説明した。



安倍氏の体調をめぐっては、内閣支持率が低迷する中、新型コロナウイルス対応をめぐり厳しい批判にさらされるなど、疲労が蓄積しているとのうわさが絶えなかった。



今月に入り、1週間に2度も都内の慶応大学病院を訪れ、健康状態が悪化しているとの見方が広まった。17日には慶応病院に8時間近く滞在したが、理由は明かさななかった。



そうした中、自民党幹部は安倍氏の健康に問題はないと説明。安倍氏の側近の1人、甘利明自民党税調会長は25日、ロイター通信とのインタビューで、安倍氏が来年9月まで任期を全うするとの見通しを示していた。



しかしこの日の会見で安倍氏は、「病気と治療を抱え、体力が万全でないという苦痛の中、大切な政治判断を誤ること、結果を出さないことがあってはならない」と、辞任を決断した理由を語った。





新型ウイルスと政権の実績



新型ウイルスの流行が続く中での首相辞任となることについては、「冬を見据え、実施すべき対応策を取りまとめることができたことから、新体制に移行するのであれば、このタイミングしかないと判断した」と述べた。



そして、「コロナ禍の中、職を辞することとなったことについて、国民の皆さまに心よりお詫びを申し上げる」と謝罪した。さらに、「拉致問題をこの手で解決できなかったことは痛恨の極みだ。ロシアとの平和条約、憲法改正、志半ばで職を去ることは断腸の思いだ」と続けた。



政権の実績については、「レガシーは国民や歴史が判断していくこと」とした上で、東北の復興に全力を尽くしたと説明。「20年続いたデフレに3本の矢で挑み、400万人を超える雇用を作り出すことができた」とし、経済政策に触れた。



一方、財務省の決済文書の改ざんが問題になったことに絡み、公文書管理のあり方について質問されると、「安倍政権でさらなるルールの徹底をしている。国会において相当長時間にわたって私も答弁した。十分かどうかは国民が判断する」と答えた。





職務を果たせない場合は



後継が決まる前に、安倍氏が首相の職務を果たせなくなった場合には、臨時代理を置くことができる。 臨時代理となる順番は、麻生太郎副総理兼財務相菅義偉官房長官茂木敏充外相と続く。



臨時代理が衆議院を解散することはできないが、新しい党首や首相が決まるまでの間、条約締結や予算編成などを指揮することとなる。



安倍氏はこの日の会見で、「私の体調はその間、絶対大丈夫だと思っている」と述べた。



安倍氏の後任の首相は、自民党総裁選挙で選ばれた同党総裁が、国会での首相指名選挙での当選を経て就任する流れだ。



自民党総裁としての後任の任期は、安倍氏と同じ2021年9月末まで。






<解説>安定と不祥事 ――加藤祐子BBCニュース(東京)



安倍晋三首相は10代のころから、持病の潰瘍性大腸炎を患ってきた。2006年9月発足の第1次安倍内閣では、この持病悪化のため2007年8月に辞任を余儀なくされた。



今年夏になり日本の新型コロナウイルスの感染者が再び増加するにもかかわらず、安倍首相が国民の前に出る機会が減ったことから、健康不安説が取りざたされていた。



そして今回も、持病の悪化を理由に辞任することとなった。



日本の首相として、連続在任日数が歴代最長となったばかりだった。その安倍政権は、長期政権ならではの安定した権力基盤を築き、安定性ゆえに大胆な経済対策を打ち出すことができた。ドナルド・トランプ米大統領とは(しばしばゴルフ場で)友好関係を築き、日米関係を改善させた。



その一方で、身内びいきや公文書の廃棄や改ざんなど、不祥事の相次ぐ政権でもあった。日本が新型コロナウイルスパンデミック(世界的流行)に襲われると、その対応には時に遅すぎる、効果が乏しい、国民の置かれている状態を分かっていないなどと批判された。



さらには、安倍氏にとって特に重要な、(国民の間では賛否両論の続く)改憲を自らの手で実現するという「悲願」は、少なくとも当面は果たせないままで終わることになった。





(英語記事 Japanese PM Abe 'set to resign for health reasons'