「トルコ:アヤソフィアを博物館からモスクに戻す」(Sputnik日本・TRT日本語・BBC NEWS JAPAN)

「トルコ:アヤソフィアを博物館からモスクに戻す」(Sputnik日本・TRT日本語・BBC NEWS JAPAN)







(Sputnik日本)

https://jp.sputniknews.com/culture/202007077590887/





トルコがアヤソフィアをモスクに戻す動きをキリスト教世界は懸念 アヤソフィアは2つの宗教世界のシンボルのままであり続けるのか







© Depositphotos / Seregalsv





文化





2020年07月07日 07:03






筆者 : ニキータ リヴォフ





トルコのアヤソフィア(旧ハギア・ソフィア大聖堂)は、イスタンブールのシンボルであるだけでなく、同国で最も人気のある観光スポットでもあり、ユネスコ世界遺産にも登録されている。ハギア・ソフィア大聖堂は6世紀に正教会の聖堂として建立され、その後モスク(今のアヤソフィア)に転用、1920年代以降は博物館となった。そのアヤソフィアが今、再び世界の注目を集めている。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、アヤソフィアを再びイスラム教の祈りが響き渡るモスクに戻そうとしている。しかし、国際社会はこの動きを一様に懸念している。





イスタンブールアヤソフィア キリスト教イスラム教の間で



アヤソフィア(旧ハギア・ソフィア大聖堂)は、ビザンティン建築の唯一無二の建造物だ。東ローマ皇帝ユスティニアヌス1世(在位518〜527年)は、コンスタンティノープル東ローマ帝国の首都。現イスタンブール)の栄光を後世にまで伝えることを決意、ハギア・ソフィア大聖堂の建設を命じ、532〜537年に完成した。ユスティニアヌス1世は、この大聖堂を世界に類のないものにすることを夢見て、床を金塊でつくることさえ計画した。







© Fotolia / Sergey Dzyuba

アヤソフィア






1453年にコンスタンティノープルオスマン帝国によって陥落した後、大聖堂はモスクに変わり、コンスタンティノープルイスタンブールと改名された。1935年、トルコ共和国建国の父と呼ばれるケマル・アタチュルク初代大統領が署名したトルコ政府の政令により、アヤソフィアは博物館となり、建物内に描かれた初期のキリスト教フレスコ画やモザイク画を塗り固めていた漆喰の層は剥がされた。1985年、アヤソフィアユネスコ世界遺産に登録された。





地位変更は、政治的な動きによるもの?



トルコのエルドアン大統領は2019年3月、アヤソフィア博物館をモスクに戻すことを提案した。



トルコでは今年、コンスタンティノープル陥落の日にあたる5月29日に博物館の建物内でイスラム教の聖典コーランの朗読が行われた。この出来事の後、アヤソフィアの行く末を巡る議論が再び巻き起こった。



CNNトルコが6月5日に報じたところによると、エルドアン大統領は党首を務める公正発展党に対して、アヤソフィアの地位変更に関する包括的な調査を行うよう指示したという。



そして7月2日、トルコ国家評議会はアヤソフィア博物館をモスクに戻す可能性について議論した。同評議会は近いうちに最終決定を発表する。







© 写真 : Jonah Bettio

アヤソフィア






多くの西側メディアは、エルドアン大統領が打ち出したイニシアチブは、トルコの有権者を自身の政党をめぐって団結させることを目的としていると報じている。最近実施された世論調査によると、公正発展党の支持率はここ数ヶ月で著しく低下した。



エルドアン大統領は、その地位が変更された後も、観光客はスルタンアフメット広場にあるブルーモスクと同じようにアヤソフィアを訪れることができると強調した。





アヤソフィアは不和の林檎?



しかし、エルドアン大統領の提案に誰もが賛同しているわけではない。正教会を率いるコンスタンティノープル総主教庁のヴァルソロメオス1世総主教は、アヤソフィアのモスク化に強く反対した。



ヴァルソロメオス1世総主教は、アヤソフィアは最も重要な文化遺産の一つであり、これはその直接の所有者のものであるだけでなく、「全人類のもの」であるとイスタンブールでの礼拝で語った。他の地方の正教会のトップも反対の声をあげた。







© Fotolia / Mikhail Markovskiy

アヤソフィア






歴史家たちも、アヤソフィアの地位が変わる可能性を懸念している。イスタンブールのボアズィチ大学の歴史家エドヘム・エリデム氏は「アヤソフィアは1500年にわたってその建築を根本的に変えることなく、2つの世界的宗教に仕えてきた。このような建築物は世界でも指で数えるほどしかなく、保存する必要がある」と指摘している。



ロシア正教会も懸念を表明した。ロシア正教会の渉外を担当するイラリオン府主教は、テレビ局「ロシア24」に出演し、アヤソフィアを昔の地位に戻してはならないと強調した。



イラリオン府主教は、「今、中世の時代に戻ってはいけない。私たちは多極化した世界、多宗教世界で生きている。信者の気持ちを尊重する必要がある」と語った。



イラリオン府主教によると、キリスト教徒はアヤソフィアの唯一無二のフレスコ画の運命を案じているという。



イラリオン府主教は、「現在、アヤソフィアに存在するモザイク画は、漆喰で塗りつぶされたことにより現代まで奇跡的に残った。これらのモザイク画を見ることができるようになったのは現代の時代になってからだ。もし再びモスクになってしまったら、モザイク画の運命はどうなってしまうのか?この建物はどのように機能するのだろうか?アヤソフィアは『全人類の財産』だ」と述べた。







© CC0 / Pixabay / muratdmrkn

アヤソフィア






米国でも反対の声が上がった。マイク・ポンペオ米国務長官は声明で、米当局はトルコに対し、アヤソフィアを博物館として維持し、モスクに戻さないよう求めると発表した。



トルコのエルドアン大統領は3日、アヤソフィアの博物館としての地位が失われる可能性に関してトルコ政府を非難することは、国の主権に対する攻撃だと述べた。



エルドアン大統領は「我々は他の国々の礼拝場所には干渉しない。したがって、我々の聖地に干渉する権利や権限は誰にもない」と述べた。



トルコのメヴリュト・チャヴシュオール外相は、トルコは他の国々の意見を考慮することなくアヤソフィアの地位を変更し、モスクに戻す権利を持っていると述べた。





なぜアヤソフィアロシア正教会にとって重要なのか?



ロシア正教会は、世界の文化・宗教的遺産としてのアヤソフィアの行く末に懸念を表しているほかに、アヤソフィアがロシアの国家形成に重要な役割を果たしたことも指摘している。(後のロシアの形成につながる)キエフ大公国ウラジーミル1世(10世紀)がコンスタンティノープルに派遣した使者たちがこの美しい聖堂の祈祷に参加した際、彼らは「地上にいるのか天上にいるのか分からないと感じた」という。この使者らの訪問が、当時多神教だったキエフ大公国が988年に正教を国教として導入することにつながった。





タグ ISIS, 宗教, トルコ











(TRT日本語)

https://www.trt.net.tr/japanese/toruko/2020/07/10/erudoanda-tong-ling-ayasohuianiguan-site-guo-min-henoyu-rikake-1453016





エルドアン大統領、アヤソフィアに関して「国民への語りかけ」





レジェプ・ターイプ・エルドアン大統領が、アヤソフィアの扉は国内外の外国人、ムスリム、非ムスリムのすべての人に完全に開放されると述べた。





10.07.2020 ~ 11.07.2020











エルドアン大統領は、国家評議会の決定により博物館としての地位が撤回され、再び礼拝に開放されたアヤソフィアに関して、国民への語りかけの演説をした。エルドアン大統領は、



「人類の共通の遺産であるアヤソフィアは、新たな地位により、すべての人を、もっと誠実かつもっと独自の形で懐に抱き続ける」と語った。



トルコの司法と執行機関によって下されたアヤソフィアの決定を尊重するよう、すべての人に呼びかけたエルドアン大統領は、意見の表明の枠を超えたあらゆる姿勢や表現を、独立の神聖性として受け入れると伝えた。



エルドアン大統領は、



バチカンを博物館にして礼拝に閉ざすよう要求することと、アヤソフィアを博物館のままにと言い張ることは、同じ理屈の産物である」と語った。



エルドアン大統領は、1453年にイスタンブールオスマン帝国のファーティヒ・スルタン・メフメトに征服された後にアヤソフィアがモスクになり繁栄したことを振り返り、今日至った点について、



「これは、ちょうど567年分の権利である。信仰に焦点を当てた議論がなされるのであれば、それはアヤソフィアではなく、イスラム敵視と外国人敵視の議論だ」と述べた。



トルコ国民はアヤソフィアを絶え間なく愛してきたと述べたエルドアン大統領は、



「(国民は)『神の叡智』という意味の元の名前を変えることすらしなかった」と語った。



エルドアン大統領は、2020年7月24日金曜日に、金曜礼拝とともに、86年ぶりにアヤソフィアを礼拝に開放する予定であることも伝えた。



トルコには礼拝に開放された435軒の教会とシナゴーグユダヤ教の会堂)があることも振り返ったエルドアン大統領は、



「この風景は、違いを豊かさとみなす我々の認識の表明である」と語った。



エルドアン大統領は、



アヤソフィアの目覚めは、アル・アクサー・モスクが自由を得ることのお告げである」と述べて演説を締めくくった。





(2020年7月10日)





キーワード: #トルコ #教会 #モスク #ファーティヒ・スルタン・メフメト #イスタンブール #アヤソフィア #レジェプ・ターイプ・エルドアン











(BBC NEWS JAPAN)

https://www.bbc.com/japanese/53372018





トルコ、アヤソフィアを博物館からモスクに 世俗化の象徴に大きな変化





2020年07月11日







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トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領は10日、これまで博物館として開放していたイスタンブールの建築物アヤソフィアを、モスク(イスラム教礼拝所)として機能させると発表した。



アヤソフィアは約1500年前にキリスト教東方正教会の教会として建設されたが、1453年にオスマン帝国の侵略によりモスクに改修された。



その後、1934年に宗教的に中立な博物館となり、ユネスコ国際連合教育科学文化機関)の世界遺産に指定されている。



しかしトルコの最高行政裁判所は10日、「アヤソフィアのモスクとしての利用を停止し、博物館だと定義した1934年の閣議決定は法に則っていない」と結論した。







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アヤソフィアは宗教的にも政治的にも重要な建造物だ






トルコではかねて、イスラム原理主義者がアヤソフィアをモスクに転換するよう求める一方、中立派の野党などが反対していた。モスクへの転換案は、世界各国の首脳や宗教的指導者から批判されてきた。



エルドアン大統領は、トルコは国家主権を使ってアヤソフィアをモスクに戻したと擁護。記者会見では、7月24日に最初の礼拝を行うと発表した。



「全てのモスクと同じように、アヤソフィアトルコ人にも外国人にも、ムスリムにもそうでない人にも門を開く」



この発表の後、アヤソフィアではイスラム教の祈りが読み上げられ、トルコの主要ニュース局が一斉にこれを放送した。



一方、アヤソフィアが博物館として運営していたソーシャルメディアのアカウントは削除された。





アヤソフィアの歴史





世界の反応は?



ユネスコはこの決定は「非常に遺憾」だと発表。トルコ当局に「即刻、協議するべきだ」と訴えている。



ユネスコはこれまでも、アヤソフィアについて協議しないままモスク転換を決定しないよう、トルコ政府に求めていた。







アヤソフィアのドームにはキリスト教の装飾が残っている





東方正教会の指導者や、信者の多いギリシャもトルコのこの決定を非難している。



ギリシャのリナ・メンドニ文化相は、「市民社会へのあからさまな挑発だ」と表明。声明で、「エルドアン大統領による国粋主義によって(中略)トルコは6世紀に戻ってしまった」と批判した。



また、裁判所が博物館の地位を取り消したことについても、トルコには「独立した司法機関がないことを証明している」と指摘した。







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アヤソフィアの内部、アラビア文字の装飾が施されている






東方正教会最大のロシア正教会も、トルコの裁判所が正教会の懸念を考慮に入れてなかったことに遺憾の意を示し、今回の決定がさらなる分裂を招く可能性があると述べた。



アヤソフィアのモスクへの転換は、宗教的保守派のエルドアン大統領支持者には指示されている。



一方、作家のオルハン・パムク氏は、この決定が一部のトルコ人が持っている世俗的なイスラム教国としての「誇り」を奪うものではないかと指摘した。



「私のような世俗的なトルコ人が何百万人も、今回の決定を嘆いている。でも私たちの声は聞いてもらえない」








<解説>オルラ・ゲリン、BBCニュース(イスタンブール



6世紀に建設され、ビザンティン帝国オスマン帝国時代を生き延びたアヤソフィアに変化が訪れようとしている。今やまたしても、モスクになるのだ。しかしトルコ当局は、ドームに残る聖母マリアのモザイク画を含めたキリスト教の装飾は撤去しないとしている。



アヤソフィアのあり方を変更するのは、きわめて象徴的なことだ。この建築物を博物館にすべきだと言ったのは、現在のトルコを建国したケマル・アタテュルクだった。エルドアン大統領は今、アタテュルクが進めた世俗化の遺産を取り壊し、トルコを自分のビジョンで作り直そうと一歩を踏み出した。



アヤソフィアのモスク転換に当たり、自らを現代の征服者を呼ぶエルドアン大統領は、まったく悪びれていない。この決定が気に入らない者は、トルコの主権を攻撃しているのだと反発している。実際には、国外でも大勢が反対しているのだが。



アヤソフィアの「奪還」は、大統領支持層の宗教的保守派、そしてトルコの国粋主義者には歓迎されている。新型コロナウイルスパンデミックによる経済的打撃から世間の目をそらすため、大統領はこの問題を取り上げたのだと批判する声もある。



しかし国際社会では大勢が、アヤソフィアはトルコではなく人類に属するものだと主張し、そのままにしておくべきだと訴えている。アヤソフィアキリスト教イスラム教の架け橋であり、共存のシンボルだと。





(英語記事 Turkey turns iconic Istanbul museum into mosque





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-参考-[動画はいずれも英語です。]