ジョンソン首相、香港の300万人にイギリス市民権への道示す (BBC NEWS JAPAN)

ジョンソン首相、香港の300万人にイギリス市民権への道示す (BBC NEWS JAPAN)









https://www.bbc.com/japanese/53259716





ジョンソン首相、香港の300万人にイギリス市民権への道示す





2020年07月2日







Reuters





イギリスのボリス・ジョンソン首相は1日、香港市民300万人に対し、イギリスの市民権や永住権の申請を可能にする方針を明らかにした。



中国政府が6月30日に施行した香港国家安全維持法(国安法)が自由を侵害しているため、かつてイギリスの植民地だった香港からの「逃げ道」を作るとしている。



対象となるのは、1997年の香港返還以前に生まれた香港市民が持つことができるイギリス海外市民(BNO)パスポートの保持者。現時点で35万人いるほか、申請の条件を満たしている人が260万人いるという。



国安法は、香港での反逆や扇動、破壊行為、外国勢力との結託などを禁止するもので、違反者は最高で無期懲役が科される。





新法に国内外から批判



香港返還から23年目の記念日である1日には多くの人が抗議のために集まったが、警察が催涙スプレーなどで対応。すでに10人が逮捕されており、中には香港の独立をうたう旗を掲げていた男性も含まれている。



この法律は、1985年の英中共同声明で決定された「一国二制度」を実質的に終わらせるものだとして、国内外から批判が噴出している。



これに対し中国政府は、これは内政問題だと一蹴している。





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BNOパスポートは本来は渡航許可証であり、イギリスへの渡航についても、6カ月のビザ(査証)なし渡航しか認められていない。



保持者に自動的に就業や居住を認めるものでもなく、社会保障の対象にもならない。



しかしイギリス政府の新しい計画では、BNOパスポート保持者とその扶養家族は今後、イギリスに5年間滞在でき、就業・就学も可能となる。



5年の時点で永住権の申請ができるようになり、さらにもう1年滞在することで、市民権を得る資格が与えられるという。



首相の報道官によると、現在香港にいるBNOパスポート保持者はすぐにイギリスに渡航でき、通常の入国審査を受けるだけでよい。



また、ビザ取得に当たっての年収制限もなくすという。





英中声明を「明確かつ深刻に侵害」



ジョンソン首相は下院での演説で、香港国家安全維持法は1985年の英中共同声明を「明確かつ深刻に侵害」していると指摘した。英中共同声明は1997年の香港返還の道筋を示したもので、返還から50年間は一定の自由を認めると定めている。



「香港の高度な自治を侵害し、共同声明によって守られている自由や権利を脅かしている」



「中国がこうした方針を取り続けるなら、我々は海外のBNOパスポート保持者に対してイギリスへの新しい逃げ道を作り、居住・就業許可と共に長期滞在の権利を、さらには市民権申請の機会を与えると明言する。これが今まさに、イギリス政府がやろうとしていることだ」







House of Commons





ドミニク・ラーブ外相によると、イギリス政府は受け入れ人数や割り当てを設けない方針で、申請手続きも簡素化する。



ラーブ外相は下院で、「これはイギリスの香港市民に対する歴史的な関与に照らし合わせ、現在直面している状況のために用意する、特別にあつらえた計画だ」と説明した。



最大野党・労働党は政府の方針を歓迎した一方、収入やその他の要素で受け入れ対象を狭めるべきではないと強調した。



リサ・ナンディー影の外相は、BNOパスポート保持者のうち移住が困難な人や、香港にとどまりたい人に対しても手を差し伸べるべきだと述べた。



さらに、国連を通じて国際機関などと協力し、香港における警察暴力の調査を進めることや、中国との通商関係の見直すことなどを政府に求めた。





中国との関係はどうなるのか



イギリス政府は先に、第5世代移動通信網(5G)で中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の技術を利用することを決めている。



これについてはかねて、セキュリティー上の問題や中国政府の各地域における積極政策などを受けて、与野党の議員が反発。中国に対して強固な態度を取るべきだとの声が上がっている。



ラーブ外相は、中国とは前向きな関係を維持したいと述べた一方、中国政府は表現や平和的集会の自由を「目に余る形で侵害」し、香港市民との「約束を破った」と批判した。



BBCのニック・アードリー政治担当編集委員は、政府には今後、ファーウェイとの契約も含めて、中国との関係性を再考するよう圧力がかかっていくだろうと伝えている。










<解説>BNOパスポート保持者が持つ疑問 ――グレース・ツォイ、BBCワールドサービス(香港)



私は1997年に香港が中国に返還される前に生まれた。つまり、私は子どもの時からBNOパスポートを持っている。



BNOパスポート保持者はイギリスで5年間生活し働ければ市民権獲得の申請ができ、もう1年とどまれば永住権を得られることになる――。



このニュースが出た時、多くの友人が興奮した。少なくともこれで、国安法施行後の香港市民の逃げ道ができたと言っていた。



しかし多くの疑問が残っている。現在BNOパスポートを持っている香港市民は35万人だが、このほかに約300万人が申請条件を満たしている。そしてここには、1997年以降に生まれた扶養家族は含まれていないようだ。



イギリスはこんなに多くの香港市民を受け入れる準備ができているのか? 十分な雇用はあるのか? BNOパスポート保持者は社会保障や国民保健サービス(NHS)の対象になるのか?



救命ボートがあるのは良いことだと話す人もいる。だが、みんな本当に故郷を離れたいと思っているのだろうか? 





(英語記事 UK makes citizenship offer to Hong Kong residents





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