「香港国家安全維持法」が施行 最高刑は無期懲役/香港で「独立」の旗掲げ逮捕 国家安全維持法の施行後で初 (BBC NEWS JAPAN)
https://www.bbc.com/japanese/53244732
「香港国家安全維持法」が施行 最高刑は無期懲役
2020年07月1日
Getty Images
香港では昨年、民主化を求める抗議行動が何カ月にもわたって続いた(2019年7月17日撮影)
香港の中国返還から23年となる7月1日を前に、香港での反政府的な動きを取り締まる中国の「香港国家安全維持法」が6月30日夜11時ごろ施行された。違反者は最高で無期懲役が科される。
「香港国家安全維持法」は中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会で6月30日に全会一致で可決され、香港政府が同日に施行した。しかしその全容は、それから数時間後に明らかになった。
中国は香港での社会不安の増大や民主化を求める動きが拡大していることを受け、同法を導入した。
この新法をめぐっては、効果的に抗議行動を抑制し、香港の自由を弱体化させるものだとの批判が上がっている。
<関連記事>
香港は1997年にイギリスから中国に返還されたが、その際に香港の憲法ともいえる「香港特別行政区基本法」と「一国二制度」という独自のシステムが取り入れられた。
これにより香港では、中国のその他の地域では認められていない集会の自由や表現の自由、独立した司法、一部の民主的権利などが保護された。
「自由や法の支配がなくなった」
香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、この法は国家安全保障の「隙間」を埋めるものだと擁護した。
香港国家安全維持法の詳細は厳重に秘されてきた。中国中央政府の後ろ盾を受ける林鄭氏は、コメントする前に同法の草案を見ていなかったことを認めた。
しかし民主派議員の許智峯(テッド・ホイ)氏はBBCに対し、「我々の権利が奪われ、我々の自由はなくなり、我々の法の支配や、司法の独立性もなくなった」と述べた。
イギリス、欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)は懸念と怒りを表明している。複数の民主化推進団体は即時の取り締まりの恐れがある中、解散を始めている。
中国政府に再考を求めていたアメリカ政府はすでに、香港に認めてきた貿易や渡航における優遇措置を停止し、中国大陸と同列に扱う準備を進めている。
香港国家安全維持法について分かっていること
新法は香港の永住者と非永住者の両方に適用される。以下の内容が含まれている。
6月30日の施行以前の行為については適用されない。
新法への反応は
約6週間前に初めて導入する方針が示された新法に中国の習近平国家主席が署名した瞬間から、様々な反応がみられた。
香港の民主派活動家たちは同法で認められている処罰を恐れて、即座に活動をやめ始めた。
香港の英字新聞サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、民主派企業は抗議行動支持を示した看板などを一掃し始めたという。
民主派政党「香港衆志(デモシスト)」リーダーで著名活動家の黄之鋒(ウォン・ジーフン、英語名ジョシュア・ウォン)氏は、香港は「秘密警察国家になってしまう」だろうと警告した。
「香港は今後も高度な自治を持ち続けるという、中国政府の世界に対する約束がうそだったことが証明された」と、許智峯議員はBBC番組ニューズアワーに述べた。
約束を破ったと英外相
香港の金融街には大勢の警官が詰め掛けていると報じられた。取り締まりのリスクがあるにも関わらず、禁止されていた香港返還記念日の集会を1日に行うと決意した者もいた。
イギリスのドミニク・ラーブ外相は、中国が香港の引き渡しにおける約束を破ったと述べた。また、英政府はビザ規則に変更を加え、数百万人の香港人に対し、英国市民権を取得する機会を提供する計画を「全面的に」実行する意向だと付け加えた。
イギリスのジュリアン・ブレイスウェイト国連大使は、国連人権理事会に対し、この法は「人権にとって明確な意味合いを持つ」ものだと述べた。
ブレイスウェイト氏は加盟27カ国代表して、中国に再考するよう求めた。
(英語記事 Life sentences for breaking Hong Kong security law)
関連トピックス デモ・抗議 中国 政治 香港 デモ 法律 表現の自由
https://www.bbc.com/japanese/53245551
香港で「独立」の旗掲げ逮捕 国家安全維持法の施行後で初
2020年07月1日
EPA
香港で小規模な抗議行動がみられた(1日午前)
香港で1日、前日に施行されたばかりの「香港国家安全維持法」で初めての逮捕者が出た。当局によると逮捕されたのは2人で、うち1人は香港の独立をうたう旗を掲げていたという。
国家安全維持法は、香港での反逆や扇動、破壊行為、外国勢力との結託などを禁止するもので、違反者には最高で無期懲役が科される。
香港返還から23年目の記念日である1日は毎年、香港で民主派のデモ行進などが行われるが、当局は今年、初めてこれを禁止した。新型コロナウイルスの流行を受け、50人以上の集会が禁じられているためとしている。
それでも市内では多くの人が抗議のために集まった。警察はいくつかの少人数グループに、催涙スプレーなどで対応。少なくとも2人を逮捕した。
<関連記事>
また、反逆や扇動に当たるスローガンを叫んだりプラカードで掲げたりした場合は国家安全維持法違反となり、逮捕・訴追されるという警告の旗が立てられた。
抗議行動者への警告を記した旗
サウス・チャイナ・モーニング・ポストは情報筋の話として、4000人の警察官が騒乱に備えていると伝えた。
BBCのジョン・サドワース中国特派員は、昨年、香港で行われていた抗議活動はすべてこの法律に違反するとみなされ、最長で終身刑が科せられることになると説明。ある民主派の活動家によると、一般市民も政治や民主化、自由の話を控え、ソーシャルメディアの投稿を消していると報じた。
また知り合いの人権弁護士からは、メッセージアプリ上のやりとりをすべて消してくれるように頼まれたと話した。
自由奪われることへの懸念広がる
香港は1997年にイギリスから中国に返還されたが、その際に香港の憲法ともいえる「香港特別行政区基本法」と「一国二制度」という独自のシステムが取り入れられた。
これにより香港では少なくとも50年間は、中国のその他の地域では認められていない集会の自由や表現の自由、独立した司法、一部の民主的権利などが保護されることになっていた。
しかし、国家安全維持法の制定により、こうした自由が奪われるとの懸念が広がっている。
香港で国家安全維持法が施行 市民の反応は
香港国家安全維持法では、国家からの離脱、転覆行為、テロリズム、香港に介入する外国勢力との結託といった犯罪を犯した場合、最低3年、最高で無期懲役が科される
昨年のデモでは、抗議者たちは市内のインフラを標的にすることが多かったが、公共交通機関の施設を損傷する行為はテロリズムとみなされる可能性があるという。
中国中央政府と香港の地方政府への憎悪を扇動する行為は第29条違反となる。
また第38条では、非居住者が海外から同法に違反したとみなされる可能性も示されている。つまり、外国人が同法を違反したと見なされた場合、香港に足を踏み入れた時に逮捕される可能性がある。
中国・国務院香港マカオ事務弁公室の張曉明副主任は、6月30日の施行以前の行為については適用されないと説明している。
一方で、香港でこの法律に違反して逮捕された場合、裁判は本土で行われる可能性があると話した。
各国から批判と支援の声
アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は、この「独裁主義の」法律が「香港の自治を破壊した」と批判した。
「香港は、自由な中国人が何をつかめるかを世界に示し、世界有数の成功した経済、生き生きとした社会を築いていた」
「しかし中国政府は自国民の向上心を恐れ、香港の成功の大元を破壊してしまった」
米メディアによると、アメリカでは与野党が協力し、処罰される危険のある香港市民を難民として受け入れる法案を策定しているという。
カナダは香港への渡航情報を更新し、「治安維持を理由に恣意的に逮捕され、本土に移送される可能性がある」と警告を掲載した。
台湾政府は、政治的なリスクに直面している人たちのための特別室を設けると発表している。
イギリスのドミニク・ラーブ外相は、中国が香港の引き渡しにおける約束を破ったと述べた。また、英政府はビザ規則に変更を加え、数百万人の香港人に対し、英国市民権を取得する機会を提供する計画を「全面的に」実行する意向だと付け加えた。
(英語記事 HK arrests dozens as 'anti-protest' law kicks in)
関連トピックス デモ・抗議 中国 政治 香港 デモ 法律 表現の自由