COVID-19はグローバリゼーションを死に至らしめるか? (VOA NEWS)

COVID-19はグローバリゼーションを死に至らしめるか? (VOA NEWS)









(Will COVID-19 Kill Globalization?: VOA NEWS)

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COVID-19はグローバリゼーションを死に至らしめるか?





ロブ・ガーバー





2020年4月21日07:30AM








[この2020年4月6日の写真では、ワシントンDC、ザ・ワーフのアンセム・コンサート会場の看板に、「私たちはここを切り抜けて見せる」と書かれている。]





ワシントン―エコノミストたちはコロナウイルスの影響についてほぼ異口同音に、これが大恐慌に匹敵する深刻な世界的不況になると評価する。しかし、ウイルスが制御下に置かれると、金融市場は1930年代の時よりもずっと速く回復すると十分に信じられる理由がある。



しかし、その回復が為された時に経済がどのような形を取るかは、全く明らかでない。



先週、国際通貨基金は、2020年の世界の経済成長が急激に落ち込むと予測するレポートを公表した。IMFは年間の予測を、当初の約3%の成長からマイナス3%に下方修正した。



「世界経済が少なくとも第二次世界大戦以来の、そして、恐らくは大恐慌以来の最も深刻な不況に向かっているのは間違いないと思う」と、ワシントン・経済政策研究所の通商・製造業政策研究部長のロバート・スコット氏は述べた。







2020年4月20日ニューヨーク市ウォール街で、ホームレスの乞食が自分のバケツにお金が入っていないかを確かめている。ここではコロナウイルスのために金融市場と企業の大部分が休業を続けており、金融街の大部分に人気がない。





例えば、米国ではウイルスが流行する数ヶ月前には、小規模企業として分類される従業員500人以下の企業が約500万社営業していた。これらの企業の多くが一時的な休業を強いられており、この内どれだけの企業が再開は困難と判断するかは分からない。



経済政策研究所のスコット氏は、「小規模企業部門が大きく崩壊するのは明らかだ」と述べた。「私たちはこれらの企業を数多く失うだろう。彼らはこの不況を生き延びることが出来ない。」



しかし、世界最大の経済規模を持つ国々は、20世紀の前半と比較して大きな金融ショックに対して遥かに優れた処理能力が備わっていると、スコット氏や他の人々は指摘する。





2020年代 vs 1930年代の世界不況



「1930年代と比較して、私たちは優位な立場にいる」と、カリフォルニア大学バークレー校の経済学教授であり、ピーターソン国際経済研究所の非居住シニアフェローでもあるモーリス・オブストフェルド氏は述べた。「私たちは、金融・財政政策の手段とそれらの使い方を遥かに良く深く理解している。金融危機への対処方法や、金融業界のメルトダウンを防ぐために中央銀行が重要な役割を果たす方法について、私たちは遥かに良く理解している。」



先進国には、経済が崖から落ちるのを防ぎ、危機が終わった後の回復を速めるための手段がある。





需要を支える



2008年から2009年に金融危機が展開した時、状況は「別の大恐慌に繋がるかも知れなかった」と、オブストフェルド氏は指摘した。



しかし、各国の中央銀行は、借り入れ利率を低く保つとともに潤沢な流動性を確保し、財やサービスの需要を積極的に支えた。今日、米国連邦準備制度と他の先進国の中央銀行は同じ戦略に基づいて作業しており、金利を非常に低く保つとともに債券やその他の長期資産を購入することで経済への現金の流入を増やしている。





雇用を国内に戻す



重要な医療用品の製造を国内に戻す取り組みにより、先進国の失業はある程度穴埋め出来るかも知れない。数十年に及ぶアウトソーシングの増加により、医療機器・個人防護具・医薬品は、中国など海外で大規模に生産されるようになった。中国はウイルスが最初に現れた国だ。





新たな雇用を生み出す



国内で医薬品を製造しても、国が回復させねばならない雇用のほんの一部を生み出すに過ぎない。しかし、スコット氏によれば、「人々を良い仕事に就かせるための途方もない機会が存在するとともに、クリーンで再生可能な経済への移行や、私たちに必要なものを作ることが可能になる。」



スコット氏によると、米国で数百万人分の新しい雇用を生み出すためのより効果的な方法は、国内の老朽化したインフラを改善したり再生可能エネルギーへの投資を強めたりするための巨額の刺激策を、連邦政府が取ることだ。トランプ大統領と議会民主党はインフラ事業について長年話し合っているが、実際の行動は殆ど取っていない。今年に選挙を控える米国でこれが政治的に可能かどうかはまだ分からない。







資料―2020年4月14日、防護マスクを着用した作業員たちがアラブ首長国連邦・ドバイの建設現場で働いている。





発展途上国にとって、状況的に可能性は更に厳しそうに見える。先進国の大部分では既に大規模な刺激策が成立したが、貧しい国々は遥かに困難な道に直面している。



危機の初めに、投資家は発展途上国からお金を引き出し始めた。IMFはこれを発展途上国側からの過去最大の資本の流出と表現した。これは、米国などの国々は刺激策を成立させるために借り入れが出来るが、貧しい国々は自国が保有する資本を持ち続けるだけでも苦労しており、刺激策に資金を提供してくれる貸し手を見つけるのにも苦労するであろうことを意味する。



途上国はどうすれば回復への軌道に乗ることが出来るか?ここに特効薬は存在しないが、ウイルスが制御下に置かれると、最初に取るべき何らかの手段がはっきりするだろう。





財政支援



資本が大きく流出した国々では現金を必要としている。世界銀行IMFは既に発展途上国において貸付および補助金プログラムを強化しており、事例によっては資金を動かすための条件を緩和している。大きな先進国では既により多くの援助を利用可能にするために、このような資金や他の非政府組織への資金を増やしている。





製造を再開する



発展途上国にとって朗報だが、重要な製造業を国内に戻そうとする欧米諸国の動きが、衣類や電子機器などのより日常的な製品に及ぶことはなさそうだ。ウイルスが制御下に置かれ、経済規模の大きな国々の需要が再び増えると、世界の多くの地域で雇用が再び現れ始めるはずだ。



しかし、グローバル・サプライチェーンの再開を妨げかねないので、米国のような国々が関税と輸入規制を緩和することが不可欠だと、エコノミストたちは指摘する。







資料―2013年6月12日、テネシー州チャタヌーガのフォルクスワーゲン(ドイツの自動車メーカー)工場で、作業員たちがパサート・セダンを組み立てている。





サプライチェーンを多様化する



企業はどちらかと言えば、局地的な危機が深刻な崩壊を引き起こすリスクを減らすために、サプライチェーンの分散を進めているようだ。これは、生産の雇用が特定の地域に集中するのでなく世界中により均等に分散し、より多くの国々が最後には回復に加われることを意味するのかも知れない。



2015年後半から2018年までIMFのチーフエコノミストを務めたオブストフェルド氏は、危機後の経済において世界的なサプライチェーンが変化するのは間違いないが、その変化の多くは国内回帰ではなく、多様化という形を取るだろうと述べた。



「民間企業にとって、利益を最大化する以外の何かを行うことは誘因にならない」と彼は述べた。「そのため、コンポーネントを海外で生産する方が遥かに安価だと経済学的に考えられる場合には、崩壊・海外展開・地政学的リスクといった全ての可能性を慎重に検討する必要がある。しかし、これらに新しいものはない。」



企業はどちらかと言えば、局地的な危機が深刻な崩壊を引き起こすリスクを減らすために、サプライチェーンの分散を進めているようだ。これは、生産の雇用が特定の地域に集中するのでなく世界中により均等に分散することを意味するのかも知れない。



「これ自体が必ずしもグローバリゼーションからの大きな後退を引き起こすことにはならないと、私は思う」と、オブストフェルド氏は見通しを述べた。