【解説】 パンデミックで世界の株価総崩れ トランプ政権の渡航規制で欧州全面安 (BBC NEWS JAPAN)
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【解説】 パンデミックで世界の株価総崩れ トランプ政権の渡航規制で欧州全面安
2020年03月13日
ファイサル・イスラム、BBCニュース経済編集長
Getty Images
トランプ米大統領は欧州大陸からの渡航を30日間禁止すると発表した
世界の株価が総崩れだ。暴落の領域からもそう遠くない。ドナルド・トランプ米大統領が欧州大陸からの渡航を禁止すると発表して、欧州各地の市場が全面安となり、それが他の市場にも伝わった。
欧州中央銀行(ECB)が、英中央銀行のイングランド銀行や米連邦準備制度理事会(FRB)のように金利を下げなかったことも、株価急落の要因となった。
ダウ工業株30種の売り買いはサーキット・ブレーカーによって一時停止された。株価暴落を食い止めるための措置だが、9日に続き今週2度目の発動になった。1992年以来、初めてのことだ。
ロンドンのFTSE100種は1987年10月のブラック・マンデー以来、最悪の下落率を記録した。9日は史上5番目に悪かったが、12日は史上3番目に悪かった。欧州の主要市場は12%近く下がり取引を終えた。
新型ウイルスのパンデミック(世界的大流行)が渡航や商取引や日常生活に制限をもたらし、それによって景気が動揺し、ひいては企業債務市場にストレスを与えている。企業債務市場とは大企業が資金調達し、後に利息をつけて返済する市場だ。
かつて誰よりもはるかに早く世界金融危機がやってくると気づいたベテラン・トレーダーは現状について、「2009年初め以来、最悪の週だ」と私に話した。
債務を返済できないのではないかと特にリスクが懸念されているのは、欧州系の航空会社だ。
負のスパイラル
実体経済でのサプライチェーンの混乱と、世界経済への悲観的展望の間に、負のスパイラルが生まれている。
金利引き下げの効果は限定的なのではないかと懸念されている。そして実際、ユーロ圏ではいくら金融機関に資金を注入しても、金融緩和策は限界に近づいていると明らかになった。
たとえば、イギリス政府が来年度予算案で提示した健全な課税と支出の案も、ここ数週間を乗り切ろうというその場しのぎにすぎない。今後何カ月もそれで経済の動揺を乗り切ろうというものではない。
財政政策とは、政府がどうやって課税と支出水準を調整するかを決めるものだが、イギリスはその財政政策による対応がさらに必要になる。その場合は、政府が11日に示した来年度予算案の数字はすべてが帳消しになってしまう。財政赤字の対国内総生産(GDP)比が2~3%にとどまるという前提は特に。
問題はウイルスだけではない
しかし問題は、新型コロナウイルスにとどまらない。株式市場での企業価値評価は世界的にすでに「泡だって」いた。世界経済の成長率は伸び悩んでいるのに、低金利政策のせいで過大評価につながっていたのだ。
マスクや消毒ジェルの売り切れを伝えるロンドンの薬局
企業債務も2008年に比べて高水準にある。それだけをとっても、いずれ対応を余儀なくされたはずだ。しかし今のパンデミックのせいで、はるかに残酷な形での修正が迫られている。
とは言うものの、この世界的な問題に世界としてまとまって対応するべく、一定の安定した指導力が示されていれば、市場にもある程度の安心感が生まれたかもしれない。
ところが昨夜、トランプ大統領はその正反対のことをした。深刻な健康問題への対応と、以前から続く欧州連合(EU)との通商問題を一緒くたにしたように見えたのだ。
もちろん、現時点での最大の課題は経済ではない。そうあってはならない。しかし、世界の市場は問題山積の現実を指さしている。
(英語記事 Pandemic crashes global stock markets)
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