21世紀の日本は?(RFI)

21世紀の日本は?(RFI)









(Quel Japon pour le XXIe siècle ?: RFI)

http://www.rfi.fr/fr/asie-pacifique/20200123-quel-japon-xxie-si%C3%A8cle





21世紀の日本は?





発表:2020年1月24日21:11







安倍晋三氏は列島と地域の安定において、混乱する状況の中で有能な守護者としての自身の立場を少しずつ明確にしている。REUTERS/Issei Kato





文:マリー-フランス・シャタン






日本は最早全てに成功している特別な大国でない。列島は多くの難問に直面しており、2012年から首相を務める安倍晋三氏は、アジアや世界の舞台で国を輝かせるための立て直しに取り組んでいる。





3,800万人を超える人が住む大都市・東京で、この夏オリンピックが開催される。開幕は7月24日。2020年の大会はこの日本の首都にとって、1964年に開かれた大会よりも歴史的な位置づけでは間違いなく劣るだろう。第2次世界大戦終結後ちょうど20年、オリンピックは社会の進歩と開かれた世界の媒介者として、アジアで最初に日本に降り立った。



今年は事情が少し異なる。戦後の衝撃的な経済の台頭により世界第2位の経済大国になれた日本だが、その地位は中国に奪われ今日では衰退のモデルに直面しており、そのため、国際的にあまり快適でない状況に置かれている。国は高度に発展しその文化は魅力的だが、日本は最早全てに成功している特別な大国でない。つい先日、徳仁天皇が即位し新たな御代に入ったばかりだが、日本は将来の展望について自問している。問題は人にあるのではなく、むしろ、国内や世界の問題を同時に背景としていることは明らかだ。





日本の積極外交





各種スポーツの世界大会、大阪のG20サミット、先日の教皇の訪問、今春の習近平・中国主席の訪問と、日本は非常に多様な形で国際的な場面の舞台となっている。また、日本は地政学的に、北朝鮮のミサイル発射・中国や韓国との複雑な関係・全く予測不可能な米大統領と、特に不安定な道筋の分岐点にいる。戦略的後退という米大統領の脅迫のために、日本側は見捨てられることへの恐怖を強めている。更には、千島列島についての協定が今なおロシアとの間にない…





これも聞く:千島列島、未解決の紛争





2012年から首相を務める安倍晋三氏の指導の下、日本ではしばらく前から積極外交の作業が続けられている。サヘル同盟へのオブザーバー派遣、南スーダンへの自衛隊派遣、ジブチ駐留、ギニア湾における海賊との戦い、米国の脱退を他所に環太平洋パートナーシップを維持し続けていること。



日本側のこの積極的な作業は、国際システムを定義する役割と国際的な自由の秩序を守る役割を果たしたいという日本の野心を示している。日本の同盟国が増えていることがその表れだ。日本はこれからも安全保障環境の悪化に対応しながら、多国間主義や米国との軍事的パートナー関係を支えていく。すなわち、東南アジア諸国の支援、そして、日米豪にインドが加わった「自由で開かれたインド太平洋」のための4カ国同盟の創設だ。





地域の守護者





東京では、日本の外務省や慶応大学、キヤノングローバル戦略研究所、更には中曽根康弘平和研究所で、同じ懸念が表明されている。北朝鮮による核計画と日本への攻撃能力、中国による軍事力の急速な台頭、そして、日本周辺で積極性や攻撃性を大きく強めるその軍事的活動、中国の「新しいシルクルート」、そして、アジア諸国に掛かる中国の圧力は、日本国民にとって気懸かりだ。







中国の「新しいシルクロード」の地図。これは「一帯一路」とも呼ばれている。Reuters





しかし、それだけでない。米国の影響力の低下が中国に利益をもたらしていることや、ドナルド・トランプ氏が北東アジアや東アジアから米軍を撤退させると脅していること、1965年に関係正常化の条約を結んだにも係わらず両国間の乗り越えられない過去のために複雑な韓国との関係、これらはいずれも考慮すべき要素だ。これらの結果、日本は恐らく孤立化が進んでおり、また、北朝鮮による脅威の増大にも係わらず、日本は国際的な支援が減っていると感じている。日本はアジアにおいて、混乱した情勢の中で地域の安定を守る国を自任している。



北京との関係は曖昧だ。日本経済は中国と密接に繋がっている。2019年、中国は日本にとって米国と同じ程度に重要な2番目の貿易相手国であり、貿易額は約3,300億ドルだった。日本は中国にとって第一の部品供給国であり、一番の顧客だ。 それでも、両国はいくつかの分野で対立している。植民地主義・日本の過去に関連するものや、尖閣諸島についての主権をめぐる領土紛争も存在している。日本は、後見人としての米国の役割は以前ほど確実でないと考えており、また、米大統領が東アジア諸国サミットに欠席したため全てが中国中心から変わっていないと指摘している。





日本と欧州連合との共通の利益





2019年、欧州連合と日本のパートナーシップは、戦略的パートナーシップ協定(SPA)と経済的パートナーシップ協定(EPA)の2協定の発効により新たな戦略レベルに達した。この2協定は欧州ではあまり宣伝されなかったが、歴史的な瞬間として双方の側で祝福された。米国と中国が多国間主義と自由貿易を検討し直すという文脈の中で、EUと日本は共通の利益について同じ分析を共有している。両者は世界貿易機関の改革に賛成し、また、今年1月14日にはワシントンで、米国―少なくとも現在は多国間主義に注力する方向に戻りつつある―との間で、名指しこそしなかったが中国を念頭に置いた、産業補助金の分野におけるWTO規制の強化を求める共同宣言の署名に成功した。







安倍晋三・日本首相、両側はジャン-クロード・ユンケル欧州委員会委員長とドナルド・トゥスク欧州理事会議長、2018年7月17日東京にて。Koji Sasahara/Pool via Reuters





日本と欧州連合は、民主主義・人権・透明な政治・市場経済武力行使の回避などの価値の共有を強調している。Le Japon en 100 questions : Un modèle en déclin ? [日本、100の問題―衰退のモデルか?](タランディエ社刊)の著者ヴァレリー・ニケ氏によれば、欧州の側で防衛と安全保障が優先すべき課題との認識が強まったことや、日本の側で2014年から新しい防衛法制が採用されたことに伴い、両者のパートナーシップは進化している。それでもやはり、ギブール・ドラモット氏の著書 Le Japon dans le monde[世界の中の日本](国立科学研究センター刊)で読むことができるように、イギリスが欧日関係の中で示す影響力や、インド太平洋地域における同国の常駐の、あるいは、定期的な軍事プレゼンスのために、この関係がブレクジットにより調整を受けることは避けられない。



それでもなお、EPAとSPAについて、特に基本原則を守ることの限界について多くの問題が生じた場合、その諸事象が姿を現しそれらの真の政治的意思が試されるまで、対話が続けられるだろう。未来においてこの歩み寄りが実際に確認されることがただ望まれる。





さらに進むには:





地政学ディベート






21世紀の日本は?(第1部)、1月25日土曜日19:10(協定世界時)に放送



21世紀の日本は?(第2部)、1月26日日曜日19:10(協定世界時)に放送





日本 外交 RFIのお勧め番組







(投稿者より)



"les habitudes de dialogue sont là en attendant les évènements qui se présenteront qui auront valeur de test quant à l'existence d’une réelle volonté politique" 「その諸事象が姿を現しそれらの真の政治的意思が試されるまで、対話が続けられるだろう」、適訳かどうかあまり自信がありません。他にも誤訳があるかも知れません。御容赦ください。



"lutte contre la piraterie dans le golfe de Guinée" 「ギニア湾における海賊との戦い」、自衛艦の展開先は主にイエメン沖ですから、正しくは『アデン湾』でしょう。



記事は、末尾に示されている討論番組の第1部の要約で、第1部では日本をめぐる外交・防衛面の環境が話題になっています。第2部は、少子高齢化・移民・政府債務・次期首相など、内政・経済問題を扱っています。



記事は現状の解説に重点が置かれ、未来への展望はあまり伺えないのですが、日本と離れた視点で現状を俯瞰する、という意味で御紹介しようと思いました。