「日本のAIIB参加について賛否それぞれの見方」(DW English・メルマガ『アメリカ通信』):阿修羅♪

「日本のAIIB参加について賛否それぞれの見方」(DW English・メルマガ『アメリカ通信』):阿修羅♪

http://www.asyura2.com/15/hasan95/msg/498.html











(Japan's dilemma over the China-led infrastructure bank: DW English)

http://www.dw.de/japans-dilemma-over-the-china-led-infrastructure-bank/a-18366765





金融





中国主導のインフラ銀行をめぐる日本のジレンマ





日本政府はアジアインフラ投資銀行設立の提案について設立メンバーにならないと決めたが、専門家たちは、この判断は日本がこの地域の金融政策に及ぼす将来の影響力に損害を与えるかも知れないと語る。









ドイツとイギリスは、フランス・イタリア・豪州・韓国・ブラジル・ロシア、そして、他の国々の招待者・中国とともに参加する。しかし米国とともに、アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立の提案に参加しないために、かえって目立っているのが日本だ。習近平・中国主席が提唱するこの機関は、道路・港湾・鉄道などのインフラをアジアの新興諸国に建設するための資金供給を目的にしている。



安倍晋三・日本首相は先日の自民党の会合で、組織運営の基準や融資供給の審査手順をめぐる懸念を指摘することで、「慎重な姿勢」と表現されていることについての彼の判断を説明し、「慌てて参加する必要はない」と語った。日本はまた、新銀行発行の債券が厳格な環境基準・社会基準に適合していることを保証するための審査に合格するよう要求している。



それでも、日本政府が4月8日に公表した報告では、新機関のルールづくりの過程に関与することは日本政府にとって有利だと示されていた。またその報告には、日本は15億ドルを上限としてAIIBに出資することを検討しているとも記されている。しかし、この報告が出来上がったのは、同機関の設立メンバーになるための申し込み期限が終わった後だった。





安倍政権は、AIIB発行の債券が厳格な環境基準・社会基準に適合していることを保証するための審査に合格するよう要求していた





遅れた判断



アナリストたちは、日本政府がこの機関の設立メンバーとなる締め切りの3月31日までに申し込む判断をしなかったのは、戦略ミスだったとはっきりするかも知れないと述べている。彼らは、この動きによる逃れられない結論として、日本は最も近しい政治・安全保障面の同盟国である米国に追従しているだけだと主張する。



「新銀行は中国のただの政治的道具になるだろうと日米両国の政府は感じており、そして当初は、他の多くの国々が参加するとは両国とも予想していなかった」と、テンプル大学日本校現代アジア研究所のロバート・デュジャリック所長がDWに語った。「しかし、その点で両国がひどい計算間違いをしたのは明らかだ」と、彼は付け加えた。



「私の考えでは、日本も米国も参加すべきだった。なぜなら、そうしたならば、両国は最初から内部に人を置き、組織のことや組織の目的・運営方法をより良く理解し、銀行の方向性に影響を与えるより良い機会を得ることができたからだ」と、彼は語った。





結束を乱さない



「しかし、日本にとって最も重要なことは、安全保障の懸念のために米国との結束を乱すように見られないことだ」と、デュジャリック氏は強調した。



日本政府は選択を保留していると主張することで選択保留の努力を続けているが、それでさえ、6月の最終判断が弱く聞こえるようにしているに過ぎないとデュジャリック氏は考える。彼は、日本は今年中にその機関に参加したいとの強い意思を表明することになるだろうと語る。「日本の参加は遅れ、日本は面目を失い、尻尾を巻いて参加することになるだろう。」



東京・明治大学の国際関係学教授・伊藤剛氏も同様の見方だ。日本の参加は「政策に影響を与える立場になるには遅すぎる」かも知れないと、彼はDWに語った。



それでも、日本政府が示している慎重な姿勢は正当なものだと伊藤氏は考えている。なぜなら、このアジアの2大国は、イデオロギー・経済・歴史・地政学といった面で深い相違による隔たりがあるからだ。



さらに、日本は既に世界銀行アジア開発銀行の有力なメンバーで、日本政府はこうした組織のアジアにおける重要性を薄めたくないと考えていると、教授は強調した。



また、中国政府がこの組織を「得点稼ぎ」の方法として使う可能性があるという怖れの感情が日本国内にある。日本政府の提案は中国主導のこの組織に無視されるかも知れず、当然の心配事も却下され、現在持っている世界的な影響力もだんだんと弱くされる可能性があると、伊藤氏は指摘した。



それでも、設立メンバーにならなければ日本は新銀行内部の意思決定過程に影響を及ぼすことはできないだろうから、それに関連したリスクはあると彼は指摘した。





クラブから除外される



AIIBクラブから除外されることで日本は不利な立場に置かれるかも知れないと、日本メディアの考えは幅広く一致している。



日本の朝日新聞は論説で、「日本の提案が銀行の政策に反映される可能性を確保するよう意見を表明するために、日本政府は銀行の枠組みづくりに参画した方が賢明だ」と述べた。





AIIBはアジアにインフラを建設するための融資供給を目的としている





「日本はAIIB設立合意の詳細について情報を集めるだけでなく、日本が急速に変化しつつあるアジアで目的とすべき役割や中国の影響力増大という現実にどう立ち向かうかなど、もっと根本的な問題を考慮すべきだ」と、論説は付け加えた。



デュジャリック教授は、日米各国の政府は後を振り返り、AIIBに参加しなかったことを既に後悔していると考えている。「日本と米国が連んで中国を攻撃し、他の主要国にも申し込まないよう影響力の行使を試みたが、他の国々が参加した時にそれが裏目に出たように見える」と、彼は語った。「これについて日本は明らかに米国に追従しているが、そのことは米国政府と、さらには、日本政府が現在、思考に機能障害を起こしていることを示しているように思えてならない。」







発表 2015年4月8日

記者 Julian Ryall, Tokyo

関連テーマ アジア

キーワード アジア日本中国AIIBインフラ金融銀行安倍晋三














(メルマガ:『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』より一部抜粋)

http://archive.mag2.com/0000110606/20150409212024000.html







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┃日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信 ┃ http://www.realist.jp

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├ 2015年4月9日 AIIBって実は中国の苦肉の策なのでは?

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おくやまです。



先日の放送(http://www.nicovideo.jp/watch/1428581731

でもとりわけ反響の大きかったトピックの

元記事を要約しましたのでご紹介します。



最近話題の、北京政府による

「中国インフラ投資銀行」(AIIB)の創設ですが、

アメリカで活躍している香港出身(?)の研究者によれば、

これは逆にここ十年間にわたる

中国の失策のあらわれであるという逆説的な見方です。



私としてはこのすべての見解に同意するわけではないですが、

それでもこの論者がなかなか説得力のある議論を展開していることは

認めざるを得ません。



私の基本的な認識は、

中国というのは自分たちでもコントロール不能の、

実のところ、政治/戦略が下手である

というところに傾きつつあるわけですが

(逆にコントロール不能だから怖いとも言えますが)、

イギリスもこのような中国の弱みをわかっていて参加した

というフシがありそうです。



たしかに中国はこの辺のマネージメントが下手そうで、

結局はイギリスあたりに主導権を握られて全然儲からない

というパターンに行きそうな可能性も。



日本としても柔軟に対応したいところです。



===



▼China Steps Back|NY Times

http://www.nytimes.com/2015/04/06/opinion/china-steps-back.html



中国は一歩後退



●北京政府が計画している、

新しい多極的な「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)

はワシントン政府を不安に陥れている。

ヨーロッパのアメリカの同盟国を含む40カ国以上が、

オバマ政権の反対や警告にもかかわらず、

すでに参加を表明しているからだ。



●ところがアメリカはAIIBを全く恐れる必要はない。

むしろそれに反対すること自体が誤りだ。

この銀行をつくっても中国はアメリカを犠牲にして

世界へ権力を拡大することはないからだ。



●というよりも、今回の動きはむしろ中国にとって後退である。

なぜならそれは、新興国における二国間関係の推進が失敗したことを

中国自身が認めたことを意味するからだ。



●「中国がアメリカに代わって世界一の国になる」という心配は、

冷静な分析を妨げることになるので注意が必要だ。



●たとえば2007年に中国が独自の国富ファンドを作ったことがあったが、

この時も多くの人々から「中国が戦略的資源を支配し、最先端技術を入手し、

そして世界の金融市場を混乱させることになる」という声があがった。



●ところが2014年に5750億ドルをコントロールしていた

中国投資有限責任公司CIC)は

利益を出せずに苦しんでいる状態であり、

中国の国家監察局によれば、

この理由の一部は運営管理のまずさにあるという。



●2008年にアメリカの金融機関が危機に陥っている時に、

中国は日本を超えて世界最大の米国債保有国となっており、

中国は将来これを捨てると脅すことによって

アメリカを経済的・政治的に服従させることになるのでは

という予測を生み出すことになった。



●ところが中国の保有する米国債の量は

そこから2倍の規模に膨れ上がり、

2008年初頭の4930億ドルから

今年初めには1.2兆ドルに増えている。

つまりここでも心配性の人々の心配は実現しなかったのだ。



●彼らの予測の失敗の原因の一つは、

彼らが中国の対外投資の本当の勢いを見落としていることが多い点にある。

北京政府が国富ファンドを創設して米国債を買い上げたのは、

その莫大な量の外貨準備高

(しかもこれは貿易黒字の拡大によっていまだに伸びている)を

安全かつ確実に利益の出る方法で投資したかったからである。



●中国のAIIB創設への動きは、

彼らが直面している経済面での難問への合理的な対処なのだ。



●北京政府は十年以上にわたってその莫大な額の準備高を、

中国の(主に国営)企業が世界で行うインフラ事業や

鉱山開発などで手がける事業のために使ってきた。

これを実行するために、彼らは途上国に対して

二国間での融資や譲渡という形でその莫大な資金を使うと約束しており、

2013年のランド研究所の推測によれば、

その総額は2001年から11年の間で6710億ドルになるという。



●北京政府は投資先の国に影響を与えることを

ほとんど考慮せずに貸しているのだが、

条件として中国の企業や中国産の製品を使うことを求めていた。

これらの取り決めは中国企業に儲けさせることだけを考えたものであり、

しかもこのやり方はあまりにも露骨で儲けはすごかった。



●もちろん中国のアフリカに対する支援によって

経済面で新しいチャンスが生まれたことはたしかであるが、

新たな不平等を発生させ、

それが政治的にも反発を生じさせることになったのも事実である。



●たとえば中国が銅鉱山開発のために

多額の投資を行っているザンビアでは、

2011年の選挙の時に反中派の候補が当選している。

2013年には当時ナイジェリア中央銀行総裁だった

ラミド・サヌシが中国のアフリカへのアプローチは

「新たな帝国主義である」と警告している。



●このような警戒感はアジアにもあり、

たとえば北京政府と長年同盟関係にあるミャンマーでも発生した。

ここ数年でミャンマー政府はワシントン政府側に寄ってきているのだが、

その理由の一部は、中国からの支援に対する

依存状態を解消したいという点にある。



●たとえばミャンマーは地元の不安の種となった

中国の支援した巨大なダム計画を中止しているのだが、

このような中国の二国間関係を使ったプロジェクトの後退こそが、

中国が多極的な投資枠組みを創設へと動いていることのあらわれなのだ。



●AIIBの投資準備額は1000億ドルに到達するかもしれないが、

その中での中国の投資額は500億ドルである。

去年中国は400億ドルを上海にある

新しいBRICS銀行に投資すると約束したが、

この銀行も、過去には「アメリカの主導する国際金融制度にとっての挑戦だ」

と見られていたことを忘れてはならない。



●つまりこのような懸念で見落とされがちなのは、

いかなる政府も多極的な制度をコントロールして

パワーを握れるかどうかは怪しいという点だ。



●アメリカが20世紀の超大国になれたのは二国間経済支援であり、

多極的な制度で獲得した権力ではない。

世銀は1944年に創設されたが、それはすぐにマーシャル・プランや

その他のアメリカの二国間支援計画によってその存在が薄れてしまったのだ。



●もちろん世銀は1970年代にようやく力をつけてきたのだが、

その当時のアメリカの世界的な影響力は弱まっていたのである。



●ようするに、多極的な制度というのは本質的に制限的なものだ。

ある国が主体となって他国に貸す場合は

その返済条件などを支配することができるが、

AIIBやBRICS銀行などを通じて投資した場合には、

その条件が他の出資者たちによって制限を受けることになるのだ。



●そして、これこそがまさに北京のやろうとしていることなのだ。

中国の財務省副長官は最近

「新たなAIIBの参加国が増えるたびに各国の決定権のシェアは落ちていく」

とコメントしているが、これはまさにこのような状態を言い当てている。



●いいかえれば、中国は自分の力をあえて引き渡しているのであり、

それには自らの創設した組織そのものも含まれている。

そして中国がこうしているのは、

他国の参加による援護とレジティマシーを必要としているからだ。



●したがって、AIIBの創設は中国の世界支配への試みではない。

これは自らの足かせをつけているのであり、

それは十年以上続けてきた二国間関係を使った動きからの撤退なのだ。



●そして中国がますます国際的な投資を多極的な制度

(しかも自分たちが作った制度だ)を通じて行うようになれば、

中国がさらに支配的になるリスクはますます低下するのだ。



(了)





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