福島の蝶が原発の大事故によるコストの重さを浮き彫りにする (DW English):阿修羅♪

福島の蝶が原発の大事故によるコストの重さを浮き彫りにする (DW English):阿修羅♪

http://www.asyura2.com/14/genpatu41/msg/620.html









(Fukushima butterflies highlight heavy cost of nuclear disaster: DW English)

http://www.dw.de/fukushima-butterflies-highlight-heavy-cost-of-nuclear-disaster/a-18147563





生物多様性





福島の蝶が原発の大事故によるコストの重さを浮き彫りにする





2011年に発生した福島原発の大事故は、動物たちが病に倒れたり人々も家や生計の手段を失ったことにより、完全なままの生態系がどれだけ重要なものか、また、その価値を測ることがどれだけ困難なことかを浮き彫りにした。





福島原発メルトダウンを起こしてから、多くのヤマトシジミが突然変異を示した





その蝶は太陽の光で羽根を青く輝かせながら、数千羽の群れを成して庭園や田畑を飛び回る。「ヤマトシジミ」(Zizeeria maha)は日本のどこにでもいる蝶だ。「人間の活動が良好な時、蝶も良好に生存が可能だ」と日本・琉球大学の生物学教授の1人・大瀧丈二(おおたきじょうじ)氏は語る。しかし、福島県の一部では、このいずれももはや真実ではなくなっている。人間と蝶のいずれも調子が良好でないのだ。





損傷した福島第1原発は太平洋に直接面するように位置している。同原発の近くでは今でも漁が禁止されている





2011年3月11日、日本の太平洋の海岸に面する福島第1原発の原子炉は、海からの地震とそれが引き起こした津波のために大変な損傷を受けた。この大災害の結果、放射性同位体が日本の上空や福島県を含む沿岸の海域に吹き出された。約160,000人が家から離れなければならなかった。原子炉から半径20km以内は当分の間、人間が居住不可能な状態が続く見通しだ。





至る所に病気の蝶がいる



原発が大事故を起こした2ヵ月後、生物学者の大瀧丈二氏は同僚たちとともに福島への調査旅行を始めた。手袋とマスクを身に付け、ヤマトシジミ蝶が放射性物質の被曝によりどのような影響を受けたかを調査するために、彼らは方々に展開した。10匹に1匹の割合で、蝶に目のくぼみ・通常より小さな羽・左右非対称な触覚が発見された。こうした成虫の蝶は事故発生当時、幼虫として越冬中だった。





高レベルの放射性物質に被曝した地域から研究者たちが持ち帰った蝶





4ヵ月後、つまり、蝶がほぼ世代交代を終えた時に研究者たちが福島に戻ると、彼らは突然変異がより深く進行し、蝶のほぼ3分の1に明確に見られた。研究所内では、放射線の影響を受けた植物を摂取するだけで健康な蝶の幼虫が病気になるのに十分だったと、研究者たちは結論を出した。



さらに、環境の中の放射線レベルによる影響を受けて病気になった動物は蝶だけでなかった。ウシの体皮やツバメの羽に通常見られない白い斑点があるのを米国の研究者たちは発見した。「放射線の高い地域内で鳥の個体数や種の数に大きな減少が見られる」と、米国の生物学者ティモシー・ムソー氏は語る。ムソー氏は過去14年間、放射線が動物に及ぼす影響の研究を続けている。最初はチェルノブイリの損傷した原子炉の周辺地域で研究していたが、2011年から福島が加わった。





チェルノブイリとの類似点



ムソー氏と同僚たちは白い斑点に加え、チェルノブイリ周辺のいくつかの鳥の種から腫れ物と眼病を発見した。彼らはまた、多くの動物の種が−蜂・蝶・鳥など−数を大きく減らしていることも発見した。チェルノブイリでは時が経つとともに突然変異を示す動物の種が増えていると、ムソー氏は語る。福島では影響を受けた地域が狭く放射線の種類も少し異なるため、同様の推移が見られるかどうかを判断するのはまだ早すぎると、この放射線生物学者は語る。



原子力メルトダウンの働きによる自然破壊の評価を算出するのは難しい。その理由としてまず、蝶が受けた損失、あるいは、1つの動物種の全体が受けた損失に対して値札を付けることは、生態系と生物多様性の経済学(TEEB)プロジェクトなどの研究による試みが丁度進められているが、容易でない。



そしてもう1つの理由として、福島の動物が実際に受けた放射線の量についてすら、専門家たちの間で合意ができていない。原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は放射線が水と陸地の生態系に及ぼす影響について、「一般的に急性の顕著な影響を及ぼすにはあまりにも微量である」という結論に至った





放射線の影響について専門家の意見は分かれている



「これは典型的な国連話法だ」とNGO団体セーフキャストのアズビー・ブラウン氏は語った。同団体はボランティアのチームとともに福島の放射能汚染の詳細な計測を実施した。「影響が出ることはほぼ確実だと彼らが言っていたなら曖昧さも減っていただろうが、私たちにその計測は不可能だろう」と、ブラウン氏は付け加えた。



ティモシー・ムソー氏もまた国連の結論に批判的な姿勢を崩していない。彼の見方では、UNSCEARのメンバーは自然の中での観察に重きを置かず、研究室の中での実験に基づくモデルに頼りすぎている。





飯舘のような場所では、その土地で再び耕作ができるように当局が表土を剥ぎ取っている。放射能を帯びた土が巨大な袋に詰められて保管されている





放射能が動物界に及ぼす影響については論争が続いているが、それが人間の利用する環境資源に破壊的な影響を及ぼすことについては専門家の意見が一致している。余暇・文化・精神活動の場所でさえも例外ではない。





資源と生計に厳しい打撃



例えば、観光業は原発の大事故以来回復が進んでいない。福島が属する東北地方は2012年、大事故の前年と比較して20%の訪問者数減少を見ており、特に海外からの減少が顕著だった。事故の影響を強く受けた福島県西部でさえ観光客を引き寄せようと悪戦苦闘している。この地域には人気のあるスキー場や歴史的な名所がある。



「デスティネーション東北」キャンペーンなど、観光客を呼び戻すことを目的にしている政府出資の諸構想では、地元企業のために特別に訓練された観光ガイドやクーポン券が用意されている。



原発の大事故の影響を受けているのは観光業だけではない。多くの漁師や農民もまた生計の手段を失った。わずかの例外を除き、福島沿岸での漁は禁止されている。水田や野菜畑では表土層の除去による除染作業が続けられている。最も深刻な打撃を受けた地域では、住民たちは作物の栽培はおろか自分の土地に留まることさえ許されていない。そして、それができる人たちでさえ、慎重な消費者を納得させて自分たちが生産した作物を買って貰うことに悪戦苦闘している。





原発事故以降、消費者は地元で育った作物を買うことに慎重な姿勢をとり続けている





放射線の上限と食料品には厳格な監視が行われているが、日本消費者協会の研究によれば、調査対象者の15%が福島で育った食品を食べたくないと考えていることが分かった。かの原子炉に近い南相馬市で面接を受けた3,000人の親のうち、ほぼ75%が地場の作物を買うつもりはないと語った。



政府は現在著名人の協力を受けて啓蒙活動を実施している。日本で有名な女優・秋吉久美子氏は東北地域の「未来大使」となっている。彼女は、地域で生産された食品についての「根拠のない噂」を一掃する手助けをすることになっている。





環境の損失に値札を付ける



しかし、影響を受けた人たちにとって、生活を元の軌道に戻せるようになるまでには多少の時間がかかるだろう。



飯舘村は最も汚染の高い区域の1つに位置している。この村は大事故が起きる前、有機農業の中心地の1つにまでなっていたと、セーフキャストのアズビー・ブラウン氏は語る。



例えば、技師の伊藤延由氏は大事故の数年前に農業訓練センターの建設を始めた。しかし、原発事故により計画は頓挫した。伊藤氏は、汚染された松茸と20万円余り(約1,300ユーロ)の請求書を箱に詰めて、福島原発を運営するエネルギー企業・東電の会長に送ったと、日本のジャーナリストたちに語った。破壊された土地や森林の価値を東電に理解して貰い、森林で採れたキノコをもう食べることができないことが人々にとってどのような意味かを感じて貰いたかったと、伊藤氏はその意図を語った



伊藤氏のメッセージが通じて、東電がこうした損失に対する勘定を支払う意思を持つようになりそれが可能になったとしても、それでもなお答えの出ない疑問はたくさんある。「森の中を歩くことがもはやできない人たち(…)−私たちはそれにどうやって償えばいいのか?」とアズビー・ブラウン氏は尋ねる。つまり、自然が受けた損失とその価値を把握することはあまりに難しいため、原発の大事故によって生じた損害の大部分は補償されないままになるだろう−それがたった一匹の蝶のことでも。







ウェブリンク



ジャパンタイムズ:東電に対する農民の恨みは深い

「生態系と生物多様性の経済学」プロジェクトの研究

原子放射線の影響に関する国連科学委員会

会津若松城







発表 2014年12月23日

記者 Anna Behrend /sp

関連するテーマ 生物多様性捕獲された動物

キーワード 生物多様性環境昆虫生態系ラテンアメリカメキシコグローバル・アイディア












(投稿者より)



ドイチェヴェレ(英語)サイトに掲載された記事です。誤訳があるかも知れません。ご容赦下さい。



琉球大・大瀧准教授の研究は2012年8月に「サイエンティフィック・リポーツ」誌によって発表され、それをBBCが伝えたことから全世界で大きな話題になりました。その時は私も、フランス24ドイチェヴェレの記事をご紹介しています。



今回ご紹介した記事は、同じくドイチェヴェレのサイトに掲載されたドイツ語記事の英語訳です。欧州はチェルノブイリを経験しています。ドイツなどはフクイチの事故を見て脱原発を決めています。「未来大使」"ambassador for the future"・「根拠のない噂」"unfounded rumors" など、引用符「""」がついていることにご留意願います。



生態系と生物多様性の経済学」というプロジェクトがあるそうで、そのプロジェクトの報告書の1つで震災前の2010年に発表されたもののリンクを付しておきます。何でもお金に還元して物事を考えるというのは現代人の悪い癖ですが、ただ、福島の問題は何よりもまず生命の問題である、ということはここで改めて確認したいと思います。日本ではそれに加えて、人間の尊厳の問題であり差別の問題でもある、ということになるでしょうか。お金の話はその後に来るべきものですが、それでもなお事態は途方もないことになっているようです。



あれから4年経ちました。時限爆弾がそろそろ爆発する頃です。これから少なくとも数十年は大変でしょうが、元素転換の研究は既に始まっており、光合成細菌による除染の実験も行われているようです(三菱重工の研究や文科省支援のプロジェクトですから、これらをカルトと呼ぶ人はいないでしょう)。時間はかかるでしょうが、この問題は必ずクリアされると信じています。