安倍氏の地滑り的勝利は日本にとって何を意味するのか?(DW English):阿修羅♪

安倍氏の地滑り的勝利は日本にとって何を意味するのか?(DW English):阿修羅♪

http://www.asyura2.com/14/senkyo177/msg/312.html









(What does Abe's landslide victory mean for Japan?: DW English)

http://www.dw.de/what-does-abes-landslide-victory-mean-for-japan/a-18128513





日本





安倍氏の地滑り的勝利は日本にとって何を意味するのか?





安倍晋三・日本首相の政党連合が総選挙に大きく勝利し、彼は改革の課題を進めることが可能になった。しかし、実際には有権者の目の前に選択肢が何もなかったことを低い投票率が示していると、アナリストのクリスティン・スラク氏は語る。









日曜日の日本の総選挙で、安倍晋三・日本首相の自由民主党(LDP)と同盟政党である公明党が勝利した。与党連合は衆議院475議席の3分の2を上回る325議席以上を獲得し、課題の設定が可能となった。



安倍氏は経済再生の約束によって政権に就いてから2年経たないが、自己の経済改革プログラム「アベノミクス」−通貨・財政・構造改革政策の連携−への委任を改めて得るために前倒し総選挙を実施した。



今回の選挙−日本の戦後史で最低の投票率だった−は、日本がこの4年間で3度目の景気後退に陥ったと発表されてから1ヵ月も経たずに実施された。この世界3位の経済大国の経済が2四半期連続で縮小したのは予想外だった。この最近の縮小は、4月に5%から8%へと最初の消費税引き上げが実施されたために生じた。



DWのインタビューで、ロンドン大学東洋アフリカ研究所(SOAS)で日本の政治学を研究しているクリスティン・スラク上級講師は、与党連合が改めて多数派となったことで何が達成可能となったかを語った。また、日本では、2006年から2007年までの安倍氏の1期目の政権を特徴づけた国家主義的課題への回帰が見られるようだが、それはなぜかについても語った。







DW:経済の弱さを考慮して、安倍氏は国会で大多数を得るために敢えて早期の選挙に打って出た。この賭けは勝ちだったのか?



クリスティン・スラク氏:「今回の投票では、実際には有権者の目の前に選択肢が何もなかったことを低い投票率が示している」





クリスティン・スラク氏:11月以降、日本はGDPが1.6%低下し、テクニカルな景気後退にある。実質賃金はこの1年で2.8%下落し、このため安倍氏の経済改革の一部に、特に家庭が耐え難くなっている。



さらに、格付け機関ムーディーズは日本の信用格付けを引き下げ、赤字の拡大を抑えるよう政府への圧力をさらに強めた。こうした低い数字にもかかわらず、有権者は投票での他の選択肢がほとんどなかったため、安倍氏が脅威を受けることはあまりなかった。首相にとって今回の投票は安全な賭けで、賭けは勝ちだった。





主に何の問題から、日本国民の大多数は安倍氏に投票したのか?



安倍氏は、今回の前倒し総選挙をアベノミクスについての投票と宣伝し、有権者の脚を投票所に運ばせた。2015年の主要な課題となるであろう論争になっている問題−原発再開や憲法改正−について、与党は選挙運動でほとんど表に出さなかった。



成長の低迷が25年続いたので、有権者は経済が再び動き出すのを見たがっており、また、アベノミクスを批判する人たちさえ、その多くは政府の強力なアクションが効果を生み出すのを望んでいる。安倍氏は「これが経済回復の唯一の道だ」とのスローガンを掲げてキャンペーンを行い、一般国民も同意する用意ができていた。





今回は安倍氏への信任投票だったのか?



自民党は地滑り的勝利を歓迎しているが、これはクリアしなければならない条件だった。まず、自民党議席の増加を望んでいたが、実際は議席を3つ落とした。第2に、一般的に前倒し総選挙では投票率の増加が見られるが、今回はかつてなかったほど投票所に行かなかった人が増えた。



52%の投票率は日本の戦後史上最低で、実際には有権者の目の前に選択肢が何もなかったことを示唆している。現在のシステムに対する有権者の強い不満を表す結果として日本共産党が躍進し、21議席と代議士を約3倍に増やした。





与党が優勢となった結果から、日本の野党の状況について何が言えるか?



当初世論調査が示唆していたように、日本の野党は足並みを乱している。2012年まで政権に就いていた民主党は何議席か増やしたが、その全体的な獲得数(72議席)は100議席を上回るという目標に遥かに及ばなかった。海江田万里代表が再選されず、党は深い痛手を負った。





「成長の低迷が25年続いたので、有権者は経済が再び動き出すのを見たがっている」とスラク氏は語る





民主党が強くなって2大政党制に移行してほしいと望んでいた人々は、今回の結果に落胆している。私たちには、自民党が卓越する初期の体制への回帰が見える。自民党は過去59年間のうち55年間政権を握っていたが、1960年代初期以降は自民党が並はずれた支持を得ていたわけでもなく、総選挙の得票総数で単純過半数を確保していたわけでもない。





安倍氏は予定している改革を国会で押し通すために、いまや連立を組む必要があるのか?



自民党はこれまでのパートナーである公明党と強力な勢力を維持し、連立による統治を続けるだろう。この連立により政府は衆議院で、法案の円滑な通過に必要な3分の2の大多数を持つことになる。また、参議院では単純過半数を維持しているので、衆議院から送付された法案が否決されることはないだろう。



安倍氏は12月24日に首相に再選される運びで、その後3〜4日で組閣を済ませるだろう。彼は9月に内閣を改造した−就任以来初の改造だった−が、彼が何かを変更することはなさそうだ。





安倍新政権にとって短・中期の難題は何か?



安倍氏の課題で最も急ぐものはTPPで、これを米国は来年早期の国内で選挙のサイクルが始まる前に成立させたいと考えている。安倍氏は当初からこのパートナーシップを熱心に支持していた。それでもTPPは農村部では不人気だ。農村部では農業の保護から利益を得ているからで、農民は関税がゼロになるのを嫌がっている。



自民党自体も、この貿易協定をめぐって意見が分かれている。自民党は伝統的に農村部を主要な地盤にしてきたからだ。今回改めて委任を受けたことは、来年4月に地方選挙で自民党に有利に働きそうだ。





スラク氏:「憲法第9条は、自衛権を明言し自衛隊の維持を容認するよう見直されるだろう」





安倍氏自民党は大多数を得たことにより、長期的に何が可能になるか?



安倍氏はまた、憲法を見直して国家主義的な課題を法制化するための勢いを得たいと考えている。選挙結果が判明しはじめると、彼は記者たちに、国の礎となるこの文書を修正することが彼の「切実な願い」だと語った。



自民党の現在の原案では、憲法を抜本的に見直し、103ヶ条の条文のほとんど全てを改正するよう求めている。普遍的な人権の重要性に言及した前文の言葉が、日本の長い歴史と独自の文化についての記述に置き換えられる。



天皇の地位が「象徴」から「国家元首」に昇格することになる。政府が非常事態を宣言し、この宣言に基づいて内閣が法令により秘密のうちに統治を行うことが認められるようになる。



この改正原案では、言論の自由といった個人の権利の保護よりも公共の秩序の維持が重要であると強調されており、個人ではなく家族が社会の基本単位であると定義されている。そして、第9条は−言葉通りに読むと−国権の行使としての戦争を否定しているが、自衛権を明言し自衛隊の維持を容認するように見直されるだろう。





しかし、こうした大掛かりな改革は今回の大多数で十分に実行できるのか?



衆議院で相当な大多数を保持していても、この課題を前に進めるには十分でない。衆参両院で3分の2以上の賛成が必要だからだ。自民党は現在の公明党との同盟関係だけでは参議院の単純過半数しか保持しておらず、憲法改正案は絶対に通らない。



そこで安倍氏は、国民投票で単純過半数を要件としているのに合わせて、両院での単純過半数のみを要件とするよう、憲法改正の条件を明記した第96条の改正に着手するかもしれない。





スラク氏:「安倍氏の課題で最も急ぐものはTPPだ」





この改正がもし通れば、その後で彼は憲法改革をさらに進めそうだ。これが成功しなくても、彼は政権復帰以来とってきたような代替手段を今後も使うかもしれない。今月、彼の特定秘密保護法が施行されたが、国家の安全保障に重要と見なされる問題の範囲が曖昧に定義されており、この問題について報道したジャーナリストや内部告発者に法外な懲役刑を科すために、この法律が使われる可能性がある。



そして、安倍政権の内閣法制局は既に今年の夏、日本を巻き込んだ国際紛争の解決に武力の行使を容認するよう、第9条の解釈変更を支持する結論を出した。安倍氏が改めて委任された結果として、2006年から2007年までの彼の1期目の政権を特徴づけていた国家主義的課題に回帰するように、私たちには見える。





クリスティン・スラク氏はロンドン大学東洋アフリカ研究所(SOAS)上級講師で日本の政治を教えている。彼女の専門は国際移民・国家主義・文化・グローバリゼーション。





発表:2014年12月15日

インタビュア:Gabriel Domínguez

関連するテーマ:アジア太平洋経済協力(APEC)アジア

キーワード:アジア日本選挙安倍アベノミクス経済












(投稿者より)



ドイチェヴェレの英語サイトに掲載された記事です。誤訳があるかも知れません。ご容赦下さい。



記事は投票日の翌日のものです。投稿が遅れましたが、私も本業を別に持っているので、こちらもご容赦いただければと思います。