EU、緊縮財政が国々に攻勢をかける(BBC):阿修羅♪









(EU austerity drive country by country: BBC NEWS EUROPE)

http://www.bbc.co.uk/news/10162176





2010年10月20日 最終更新13:40GMT





EU、緊縮財政が国々に攻勢をかける





新たな緊縮政策の攻勢がヨーロッパを席巻しつつある。いま、各国政府は、膨大な財政赤字の削減に格闘しており、ユーロ経済圏16カ国は、懐疑的な市場の信任を取り戻すために競争している。



フランスでは、大規模な抗議行動がいくつか見られるが、ストライキの見出しは別のページで見られる。



EU加盟国の財務大臣は、財政の諸規則を破った参加国は自動的に制裁されるという規則に、合意している。



EUは全加盟国に対し、2014〜15年の会計年度までに、財政赤字を最大でGDPの3%に抑えることを要望しているが、各加盟国はどのような引き締め策をとっているのだろうか?





イギリス





保守−自民連立政権は、第二次大戦以降最大の、国の財政を削減する諸措置を発表し始めた。今後4年間で、約800億ポンド(910億ユーロ、1250億ドル)[10兆2000億円]の節約が確実視される。



ジョージ・オズボーン大蔵大臣は、今後4年間に、国から「お金がなくなった」ために、公共部門で49万人の雇用が削減される見込みだと、国会で答弁した。専門家の予測では、民間部門でもほぼ同じ数の雇用が失われる。



ホワイトホール(ロンドンの官庁街:投稿者)の官庁の大部分は、平均19%の予算が削減され、防衛予算も8%削減される。定年は2020年までに、65歳から66歳に引き上げられる。



就労不能者への給付金は期限付きに改められ、他の給付金も税額控除や住宅給付金といった形で回収される。



削減提案の発表を前に、産業界に不安が広がることはなかったが、UNISON(公務員を中心とした、イギリス最大の労働組合:投稿者注)のデイヴ・プレンティス書記長は、イデオロギー的な理由で公共サービスに「チェーンソーを持ち込んだ」として、政府を非難した。野党労働党は、政府の「削って燃やす」政策を非難している。





フランス





フランスは、財政支出削減目標を達成するため、今後3年間に450億ユーロ(390億ポンド、620億ドル)[5兆1000億円]の支出を削減する計画を発表した。



この金額の一部は、税の抜け穴をふさぎ、現行の経済刺激策を中止することで節約される見通しだ。



ニコラ・サルコジ大統領は、定年を60歳から62歳に引き上げ、国家年金の完全受給年齢を65歳から67歳に引き上げる計画を、押し通すと主張している。最高所得階層にも、所得税の1%追加が求められる。



労働組合は、9月から全国ストライキを組織し、行動日には、常に100万人以上の人々が参加している。



デモ行進はおおむね穏やかだが、デモ隊が封鎖したガソリンスタンドを再開するために、機動隊が動員されている。





アイルランド共和国





経営危機に陥った銀行を救済するための財政負担は、450億ユーロ(390億ポンド、620億ドル)[5兆1000億円]に上り、国の財政に巨大な穴を開けた。



この負担増により、政府は今年のGDPの32%に相当する財政赤字に追い込まれることが、見込まれる。



政府はこの赤字を徐々に削減し、2014年までに75億ユーロ[8520億円]を節約することで、2.9%まで削減する目標を立てた。しかし、野党の計算では、実際には100億ユーロ[1兆1400億円](の節約が必要:投稿者補足)かも知れない。



政府支出は、すべて公務員給与を最低5%カットし、社会福祉を切り詰めることにより、40億ユーロ[4540億円]削減された。



児童手当は月16ユーロ[1820円]削減され、ひと月の支給額が150ユーロ[1万7000円]から187ユーロ[2万1200円]までとなった。



炭素税が導入され、二酸化炭素1トン当たり15ユーロ[1700円]と設定された。



9月に悪い知らせが届いた。第2四半期のアイルランド経済が、第1四半期よりも収縮したことを示す数値が発表されたのだ。





オランダ





数カ月の交渉の末に成立した、中道右派連立政権は、10月8日、180億ユーロ(240億ドル、150億ポンド)[2兆400億円]の予算削減を2015年までにしたいと語った。



しかし、新政権は法案を成立させるために、急進的な自由党に頼らなければならず、長期的に見た実現の可能性は疑わしい。





スペイン





スペイン政府は、富裕層に対する増税と8%の支出削減を盛り込んだ、2011年度の緊縮予算を承認した。



政府は、他の欧州諸国に、昨年はGDPの11.1%だった財政赤字を、来年は6%に削減することを約束している。



政府職員は6月より、賃金が5%カットされ、2011年の給与は凍結される。



12万ユーロ[1360万円]を超える個人所得に対して、1%の増税が適用される予定だ。



「ベビー・チェック」で知られる、新生児の母親への2500ユーロ[28万4千円]の現金支給の中止など、いくつかの少額支出も節約される。



失業は、2007年から2倍以上に増加し、20%となった。





ギリシャ





ギリシャ政府は、EUと国際通貨基金から1100億ユーロ(950億ポンド)[12兆5000億円]の救済資金を得る見返りに、抜本的な支出削減と税収増加を行い、経済危機を終結させることを約束している。



政府は救済資金の引き出しを始めている。国債の格付けが急落したので、借入コストが急上昇したからだ。



政府の目標は、GDPの13.6%となっている財政赤字の削減だ。



国は、脱税や税務署・税関の汚職に対する取り締まりを強化した。国内に普及していた、早期退職の枠組みにも制限を加える予定だ。退職年齢の平均が61.4歳から63.5歳まで引き上げられることになっている。



この3年間で予算を300億ユーロ(260億ポンド、370億ドル)[3兆4100億円]削減する計画に基づき、ギリシャは次の目標を設定している。公務員へのボーナス支給の停止。最小3年間の、公務員給与と年金支給額の凍結。付加価値税(VAT)の19%から23%への引き上げ。燃料・酒類・タバコ税率の10%引き上げ。



この厳しい措置が引き金となり、アテネの路上で公共労働者がストライキと暴力行為を行った。





ルーマニア





政府は、国の財政赤字を削減するため、7月に、賃金の25%カットと年金の15%カットを提案した。



ルーマニア経済は2009年に7%以上収縮しており、この賃金法案の財源手当てのために、IMFによる救済が必要だった。



政府は、総額200億ユーロ(250億ドル、170億ポンド)[2兆2700億円]のIMF融資の次回借り入れ分を承認してもらうために、新たな緊縮措置の実施が必要だと語る。



削減案に対して怒りの抗議デモが発生し、25%の賃金カットに反対して数千の警察官がデモを行ったため、バジル・ブラガ内務大臣が辞任した。





イタリア





イタリア政府は、2011-12の2カ年で、240億ユーロ[2兆7300億円]相当の緊縮財政措置を承認した。この削減額は、イタリアのGDPの1.6%に相当する。



イタリアは、公務員の給与削減と採用凍結を目標にする。公共部門の年金と地方政府の支出も対象とされ、脱税の取り締まり強化も計画されている。



市や地方自治体への交付金は、130億ユーロ[1兆4800億円]以上削減される見込みだ。



今後3年間、公務員の昇給が停止される。公務員の採用も削減され、5名の退職者に対して1名しか補充されなくなる。



閣僚や国家議員など、高収入の公務員に対しては、10%を上限として給与が削減される。



2011年に定年を迎える人は、6カ月を限度に退職日が延長される。



人口が22万人に満たない県は廃止される。いくつかの公共機関出資のシンクタンクも廃止される。





ドイツ





ドイツ政府は、2014年までに、GDPの3%に当たる800億ユーロ[9兆800億円](960億ドル、660億ポンド)を削減する、記録的な財政赤字削減計画を提案している。



2009年の赤字は全体で3.1%だが、今年は5%以上に上昇する見通しだ。



「ドイツは、良い手本を示す格好の機会を得た」と、アンゲラ・メルケル首相は語った。



その計画には、児童手当のカット、今後4年間で1万人の公務員削減、核エネルギーへの増税が含まれる。バロック様式のベルリン王宮を、市の中心地に再建することも延期される。





ポルトガル





ホセ・ソクラテス社会主義政権は、財政赤字を今年は7.3%、2011年には4.6%に削減するための、さまざまな緊縮財政措置を発表している。



政治家などの、所得の高い公務員には、5%の給与削減が予定されている。



付加価値税は1%増税され、15万ユーロ[1700万円]以上の高額所得者の所得税率が引き上げられる。2013年までに、税率は45%となる予定だ。



2013年までに、軍事支出は40%削減され、政府はリスボンポルト線、ポルト−ビーゴ線の、2路線の高速鉄道の開通を遅らせる。











(投稿者より)



イギリスのキャメロン政権が、ドラスティックな緊縮財政政策を打ち出しましたが、それにあわせて、BBCが欧州各国の財政事情をまとめましたので、それを日本語に直したものを投稿します。誤訳があるかもしれません。ご容赦下さい。



外国の事情を知っておく必要はあると思いますが、緊縮路線には、私は反対です。特別会計を見直し、中央の権限を地方に移譲することで、財政は効率化できます。さらに、成長路線を採用することで、税収が増え、赤字は解消できます。2009年のマニフェストでは、そうなるはずでしたが、あれは一体どこへ行ってしまったのでしょうか?