蔡総統、「情勢判断を誤らないよう」北京当局に呼びかけ(TAIWAN TODAY)

蔡総統、「情勢判断を誤らないよう」北京当局に呼びかけ(TAIWAN TODAY)









https://jp.taiwantoday.tw/news.php?unit=154&post=213016&unitname=%E4%B8%BB%E5%BC%B5&postname=%E8%94%A1%E7%B7%8F%E7%B5%B1%E3%80%81%E3%80%8C%E6%83%85%E5%8B%A2%E5%88%A4%E6%96%AD%E3%82%92%E8%AA%A4%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%82%88%E3%81%86%E3%80%8D%E5%8C%97%E4%BA%AC%E5%BD%93%E5%B1%80%E3%81%AB%E5%91%BC%E3%81%B3%E3%81%8B%E3%81%91





蔡総統、「情勢判断を誤らないよう」北京当局に呼びかけ





発信日: 2022/01/03 |







蔡英文総統(右)は元日(1月1日)、総統府国旗掲揚式典を終えたあと、総統府大礼堂(=大ホール)に移動して新年の談話を発表した。また、北京当局に対して「情勢判断を誤らず、内部で軍事的冒険主義が広がるのを防ぐべきだ」と呼びかけた。(総統府)





蔡英文総統は元日(1月1日)、総統府国旗掲揚式典を終えたあと、総統府大礼堂(=大ホール)に移動して新年の談話を発表した。蔡総統は談話を通して、(1)引き続き世界へ向かって歩みを進める、(2)経済発展の動力を維持する、(3)社会安全システムを強化する、(4)国家主権を守る―の4つの施政方針を示した。蔡総統はまた、香港を支持するという台湾の立場に変わりがないことを繰り返したほか、「軍事行動は台湾海峡両岸の立場の違いを解決するための選択肢にはならない」とし、北京当局に対して「情勢判断を誤らず、内部で軍事的冒険主義が広がるのを防ぐべきだ」と呼びかけた。



蔡総統はこの談話で、2021年の内政と政策の具体的成果について振り返った。そして、新たに迎える2022年については「安定した政権」の維持が最も重要な目標だとした上で、「我々は断固として主権を守り、自由と民主主義の価値を守り、領土と主権、国の安全を守り、そしてインド太平洋地域の平和と安定を維持する」と約束した。



蔡総統は香港問題にも言及した。昨年12月、香港で行われた立法会議員選挙が北京当局の干渉を大きく受けたことは、香港の民主主義の発展に影を落とすものであり、数日前、香港で多くのメディア関係者が逮捕されたことは、香港の人権及び言論の自由に影響するものだとして懸念を示した。



蔡総統はこれらを踏まえ、「民主主義と自由を追求することは犯罪ではない。香港を支持するという台湾の立場はこれからも変わらない。香港に関心を寄せると同時に、我々はこのかけがえのない民主主義と自由をさらに大切にしていきたい。台湾をさらに良くし、民主主義の台湾には権威主義の中国の陰影から抜け出す勇気があり、圧力に屈することはないということを世界にアピールしよう」と訴えた。



続いて台湾海峡両岸関係については、「近年我々は対岸(=中国)に対して、香港から民主主義と人権をはく奪しないよう呼びかけてきたし、台湾に対する軍事的介入や外交的弾圧に対しても厳重に抗議してきた。対岸のこうした行為は、この地域の平和と安定の維持になんらプラスにならないからだ」と述べた。



蔡総統はまた、「圧力を受けても屈せず、支持を得ても冒険はしない」が台湾のこれまでの立場だとした上で、北京当局に対して「情勢判断を誤らず、内部で軍事的冒険主義が広がるのを防ぐべきだ」と呼びかけた。



蔡総統はさらに、「軍事行動は台湾海峡両岸の立場の違いを解決するための選択肢にはならない。軍事的衝突は経済の安定に打撃を与える。我々がそれぞれに国民の生活を良くし、社会と民心を安定させるために取り組めば、平和的手段で共に課題に取り組み、解決方法を模索しようとする空間と雰囲気が台湾海峡両岸に生まれる。これは地域の緊張した状況を緩和することにもつながるだろう」と述べた。



今年の元旦のテーマは「堅韌台湾、立足世界(=強靭な台湾、世界に立つ)」。蔡総統は「台湾には強靭な国民がいるから、これを成し遂げることができる」と胸を張り、過去1年間にわたる国民の努力と貢献に感謝した。そして最後は、「今年、我々は共に課題を克服し、大きく前に進もう。2022年、明けましておめでとう。皆さん、ありがとう」と談話を締めくくった。
























「RCEP協定が発効、特に中国に有利な貿易協定」(DW English・RFI)

「RCEP協定が発効、特に中国に有利な貿易協定」(DW English・RFI









(RCEP: Asia readies world's largest trade deal: DW English)

https://www.dw.com/en/rcep-asia-readies-worlds-largest-trade-deal/a-60267980





ビジネス





RCEP:アジアが世界最大の貿易協定を準備している





準備に10年を掛けたRCEP協定が1月1日に発効し、東南アジア・アジア太平洋諸国間の貿易が緩和される。中国・日本・韓国の経済大国が最大の恩恵を受けることになる。







中国は、アジア太平洋諸国間の世界最大の貿易協定の主な受益者になる





アジア太平洋地域の大部分の国の間の貿易障壁が1月1日から大幅に低下する。これは世界最大の自由貿易圏が運用に入るためだ。



地域的包括的経済パートナーシップ(RCEP)は、東南アジア諸国連合ASEAN)10ヵ国と中国・日本・韓国・豪州・ニュージーランドの間の貿易協定だ。



RCEPは、世界の国内総生産GDP)の約30%に範囲が及ぶ。これは26.2兆ドル(23.17兆ユーロ)に相当する。また、世界人口のほぼ3分の1である約22億人が対象となる。



比較すると、米墨加協定(USMCA)は世界貿易の28%を対象とするが、欧州連合の単一市場はこれに及ばず18%近くで第3位だ。





「程度は浅い」が「相当な大きさ」の合意



「RCEPは程度の浅い合意だが、相当に大きなものだ」とエコノミストのロルフ・ラングハマー氏はDWに語った。これは、同協定が主に製造業を扱うからだ。「しかし、これは現在EU諸国が享受しているような巨大な圏内貿易において、アジアがEU諸国に追い付く機会を与えるだろう。」











RCEPの下で、圏内の貿易関税の約90%が最終的に撤廃される。アジア太平洋諸国がCOVID-19のパンデミックから回復しようとしている正に現在、2019年には既に2兆000億ドルの規模となった圏内貿易は大きく押し上げられるだろう。



また、RCEPは貿易・知的財産・電子商取引・競争に関する共通の規則を設けた。国連はこの動きについて、世界貿易の「重心」としてのアジア太平洋地域の地位を高めるだろうと述べた。



RCEPは圏内貿易を420億ドル押し上げるだろうと、国連の貿易部門UNCTADがこの協定についての最近の分析で述べた。





中国が最大の恩恵を



キール世界経済研究所(ifw-Kiel)の副会長だったラングハマー氏は、RCEPの利益は15署名国間で公平にはならないだろうと述べた。彼は、中国―この地域で群を抜いて最大の経済大国―が最大の恩恵を受け、日本や韓国がこれに並ぶとの予想を述べた。



「協定は、輸入側・輸出側の双方で中国の利益に合わせて作られている」と、彼はDWに語った。「RCEPは、中国に日本や韓国などの主要な輸出市場に向けた無関税の経路を提供すると同時に、その巨大な製造サプライチェーンのための輸入調達市場[ASEAN諸国]への経路を確保する。」



中国は現在、日本と2国間協定を結んでおらず、韓国との協定は限定されたものに過ぎない―両国は中国にとってそれぞれ3番目と5番目に大きな貿易相手国だ。







ビデオを見る42:35

中国のヨーロッパへの玄関口―新しいシルクロード、パート1






インドは交渉が後期に入った2019年に、中国からの安価な輸入品が国内に溢れることを懸念してこの貿易圏への不参加を決めた。





アジアの発展途上国には利益が小さい



利益の大部分はアジアの諸経済大国の手中に入るが、ASEAN域内の小さな国々にとってRCEPはその主要な産業を対象に含めていないため、彼らが不利な立場に置かれる可能性があると、ラングハマー氏は警告した。



「中国の近隣諸国の多くはコメの出荷や安価な労働力の輸出に依存しているが、サービスも農業もこの貿易協定の対象でない」と、彼は述べた。



ラングハマー氏によると、アジアの後発開発途上国カンボジアラオスミャンマー―は現在ASEAN域内の貿易の恩恵を受けているが、これがRCEP貿易による「侵食」を受ける可能性がある。例えば、これらの貧しい国々からシンガポールに向けられる輸出は、日本によって奪われる可能性がある。同国は今や全てのASEAN諸国に対して同じ貿易アクセスを得るからだ。



また、小さなASEAN諸国は、韓国や日本を含むASEAN域外への製品の無関税輸出を可能にする、貿易特恵プログラムからの利益の一部を失う可能性がある。



ただし、低所得国は、非RCEP加盟国からの商取引について相手国を変更するいわゆる貿易転換から利益を得るに違いない。UNCTADは、RCEP間の統合が今後10年間で更に進むにつれて、貿易転換は「拡大」するだろうと述べた。





関税撤廃には20年掛かる



それでも、シンクタンクのオックスフォード・エコノミクスのアジア経済部門の責任者であるルイ・カージ氏によると、RCEPに盛り込まれた関税と制約の完全撤廃には20年掛かるため、これらの経済的利益は「実現までに長い時間が掛かる。」







RCEPは、東南アジア諸国連合ASEAN)圏の10か国と中国・日本・韓国との間の新しい自由貿易協定だ



カージ氏は、文書主義がもたらす弊害の削減を大きな恩恵と見なしている。つまり、域内貿易は現在、少なくとも5つのいわゆる原産地規則の要件―製品の原産国を決定するための基準―に従っている。



「全ての署名国は、『共通の原産地規則』から利益を得る可能性がある。この規則に従えば、署名国は域内の貿易では原産地証明書が1つだけあれば良い」と、彼はDWに語った。





米国の不参加が意味を持つことに



シンクタンクのアトランティック・カウンシルはRCEPの分析で、米国の不参加により、「北京が地域の経済成長の推進力としての役割を固める可能性がある」と、警告した。



ワシントンは、環太平洋パートナーシップ(TPP)として知られる別に提案された貿易協定への参加により、中国の経済的影響力を封じ込めようと計画していた。しかし2017年、ドナルド・トランプ米前大統領は協定から脱退した。



その後、TPPの残りの加盟国は、3番目の協定である環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)を創設し、9月に中国がこれへの加盟を申請した。北京のCPTPP加盟が実現するかは全く分からないが、中国がRCEPのような程度の浅い貿易協定の規制要件を満たすことが出来れば、その可能性が高まる。



アトランティック・カウンシルは、北京にとってRCEPが将来の貿易協定を結ぶのに実際に役立つことになれば、「中国の参加と米国の不参加は更に大きな意味を持つようになる」と述べた。





クリスティ・プラッドソンが編集





発表 2021年12月30日

記者 ニック・マーチン

関連テーマ 東南アジア諸国連合(ASEAN)











(RCEP: la nouvelle zone de libre échange Asie-Pacifique entre en vigueur: RFI)

https://www.rfi.fr/fr/%C3%A9conomie/20220102-rcep-la-nouvelle-zone-de-libre-%C3%A9change-asie-pacifique-entre-en-vigueur





RCEP:新しいアジア太平洋自由貿易圏が発効する





発表 2022年1月2日 09:56







中国・青島 (Qingdao) 港の貨物船。アジア太平洋地域の15ヵ国を結ぶ新しい自由貿易圏・RCEPは2022年1月1日に発効した。CHINA-EXPORTS/ REUTERS/China Daily





RFI






世界経済において新たな重量級が生まれる。2022年1月1日、地域的な包括的経済パートナーシップ(Regional Comprehensive Economic Partnership, RCEP)が発効した。これにより、世界で最も広大な自由貿易地域が生まれることになりそうだ。





中国・日本・豪州・韓国やASEAN 10か国を含むこの新しいグループは、既に単独で世界の国内総生産GDP)の3分の1と世界人口の3分の1を占めている。



国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、このRCEPは最大能力で機能するようになった時には世界貿易の「新しい重心」となるだろう。規模からすると、これは「世界最大の経済圏になるだろう。」



今後20年間は署名国間で取引される商品の90%について関税が撤廃される。また、この協定には、商品とサービスの貿易・知的財産・電子商取引・競争についての共通の規則が用意されている。一方、この文書には、環境・労働市場・知的財産・公的助成金についての拘束力ある規則や条項は盛り込まれなかった。



2011年にこの同盟を洗礼盤の上に運ぶための交渉が始まった。協定は2020年11月に最初の加盟国によってASEANのオンライン首脳会議の際に署名され、2021年11月3日に豪州とニュージーランドがこれを批准した。ただ、インドは関心を示していたものの、安価な中国製品が国内市場に侵入するのを恐れて署名を留保することにした。





今日:RCEPに参加する15ヵ国の指導者は、ASEAN主導のメカニズムでもある最も大きな地域貿易協定の署名を目撃するだろう。 #RCEPについて、その目的や対象地域、また、RCEPが地域の経済統合にどのように貢献しているかをもっと学ぶ:#ASEAN

pic.twitter.com/gZrViNNvaW

ASEAN (@ASEAN))2020年11月15日






►これも読む:北京は広大な自由貿易協定の調印によって強化される





中国が主導



米国が2017年にドナルド・トランプ大統領の下で、競合プロジェクトである環太平洋自由貿易協定(TPP)を放棄したために残された空白を埋めるために、中国は数年前からこの条約を締結するための交渉を加速させた。





►これも読む:RCEP自由貿易パートナーシップ:ASEANに対する北京の攻勢





中国 日本 韓国 ASEAN 豪州 ニュージーランド 貿易・為替











―参考―











―投稿者より―



ドイツとフランスの記事です。EUはこれに大きく期待している、ということでしょう。一方、BBCは英語ニュースでもこれを無視しています。ロイターブルームバーグも同様です。同じ西側でも独仏サイドと英米サイドで評価が綺麗に分かれたようで、示唆的に思えました。







※ 2022.1.11 訳文を見直しました。








南アフリカのツツ元大主教が死去、90歳 反アパルトヘイト運動の英雄 (BBC NEWS JAPAN)

南アフリカのツツ元大主教が死去、90歳 反アパルトヘイト運動の英雄 (BBC NEWS JAPAN)









https://www.bbc.com/japanese/59798519





南アフリカのツツ元大主教が死去、90歳 反アパルトヘイト運動の英雄





2021年12月27日







Reuters





南アフリカアパルトヘイト(人種隔離)政策に反対し、その功績でノーベル平和賞を受賞したデズモンド・ツツ大主教が26日、亡くなった。90歳だった。





同国のシリル・ラマポーザ大統領は、ツツ氏は後世に「解放された南アフリカ」を残す手助けをしたと追悼した。エリザベス英女王やバラク・オバマ米大統領も追悼を寄せた。



南アフリカでは1948~1991年、大多数の黒人の国民を少数の白人政府が治めるアパルトヘイト政策が敷かれていた。ツツ氏は、反アパルトヘイト指導者で同国初の黒人大統領となった故ネルソン・マンデラ氏と同世代で、同じくこの政策の廃止に尽力。1984年にノーベル平和賞を授与された。



同国のイギリス国教会聖公会)は、1週間の追悼期間を設ける予定だと述べた。1月1日の公式葬の前に2日間、遺体を公開して弔問の機会を作るとしている。



南アでは先月、アパルトヘイト時代最後の大統領だったFW・デクラーク氏が85歳で亡くなったばかり。



ラマポーザ大統領は声明で、ツツ元大主教は「傑出した精神的指導者であり、反アパルトヘイト活動家であり、世界的な人権活動家だった」と追悼した。



また「比類のない愛国者だった。『行ないのない信仰はむなしい』という聖書の知見に意味を与えてくれた、信念と実践(じっせん)の人だった」と故人を振り返った。







【追悼】 デズモンド・ツツ大主教 反アパルトヘイト運動の先頭に





「たぐいまれなる知性と誠意、そしてアパルトヘイト勢力に対しては無敵の力の持ち主だった。その一方、抑圧された人、アパルトヘイトの不正義と暴力にさらされた人、そして世界中の抑圧の被害者には、優しい思いやりを抱き、共に嘆き、共感していた」



エリザベス女王は追悼文で、ツツ氏に会うのをいつも楽しみにしていたことや、その大きな優しさとユーモアが好きだったと語った。



「ツツ大主教が亡くなり、南アフリカ国民だけでなく、あの方をとても敬愛していたブリテン島や北アイルランド、そしてイギリス連邦の大勢が悲しむことでしょう」







Getty Images

(左から)ツツ大主教、エリザベス英女王、ネルソン・マンデラ大統領(当時)






ジョー・バイデン米大統領は、「神と国民に本当の意味で仕えた人の逝去を知り、心が痛い」と述べた。



「ツツ氏の偉業は国境を越え、世代を超えて残るだろう」



オバマ氏はツツ氏について、「自分を指導してくれた恩師で、友人で、倫理の指針となる人だった」と振り返った。



「ツツ大主教南アフリカの解放と正義のために奮闘しただけでなく、世界各地の不正義にも懸念の目を向けていた」



「やんちゃなユーモアを決して失わなかった。同時に、敵対する勢力にも人間性を見出そうとする気持ちを決してなくさなかった。ミシェルと私はツツ氏がいなくなって、とても寂しい」



ネルソン・マンデラ財団は声明で、「国内外の不正と闘ったその貢献に匹敵するのは、解放された未来を人間社会にもたらすにどうしたらいいか考え続けた、その深い思索だけだ」として、「素晴らしい人だった。思想家であり、指導者であり、神のしもべだった」とたたえた。



キリスト教カトリック教会のローマ教皇庁(ヴァチカン)は声明で、「ツツ氏の家族や愛する人々に心からのお悔やみを申し上げます」という教皇フランシスの哀悼の言葉を発表した。



「地元南アフリカで、人種間の平等と和解を推進することによって福音に仕えたツツ大主教の魂を、教皇は、全能なる神の愛の慈悲に委ねます」と、ヴァチカンは述べた。





アパルトヘイト運動を宗教的に主導



1960年に牧師に任ぜられたツツ氏は、1976~78年にレソトの主教、ヨハネスブルグの主教、そしてソウェトの教区牧師などを歴任。1985年にヨハネスブルグ主教となり、翌年には黒人として初めてケープタウン大主教に任ぜられた。ツツ氏は自らの地位を使い、南アフリカの黒人差別に反対する声を上げる一方、その動機は常に宗教的なもので政治的なものではないと述べていた。



マンデラ氏が南アの初代黒人大統領となった1994年、ツツ氏はアパルトヘイト時代に白人と黒人双方が行った犯罪を調査する「真実和解委員会」の会長に任命された。



また、アパルトヘイト以降に南アフリカの民族多様性を表す「レインボー・ネイション(虹の国)」という言葉を作ったことでも知られる。しかしツツ氏は後年、自分が願ったような統合はできなかったと後悔を吐露している。



「ジ・アーチ(大主教さん)」という愛称で親しまれていたツツ氏は、紫色の聖職服に身を包み、明るいふるまいと笑顔を絶やさないことで知られていた。



公の場で感情をあらわにすることもあった。2010年に南アフリカで開催されたサッカー・ワールドカップ(W杯)の開会式では、笑いながら踊る様子が注目された。



こうした人気の一方で、ツツ氏を快く思わない人々もいた。アパルトヘイト以降、ツツ氏は政権を握った与党・アフリカ民族会議(ANC)を強く批判しており、南アフリカ国民を代表しているとは言えないと述べていた。2011年にANC政権がチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の訪問をキャンセルした時には、ANC政権の崩壊のために祈りたいと警告した。



これに対し、当時の警察庁長官はツツ氏に「家に帰って黙っていろ」、「彼はイエス・キリストの副官ではない」と反発した。








<解説>アンドリュー・ハーディング・アフリカ特派員



南アフリカがたどった長く苦しい自由への旅路、そしてその先の道筋は、デズモンド・ツツ大主教なしには考えられない。



多くの反アパルトヘイト指導者が殺害されたり、亡命を余儀なくされたり、投獄された中、この小柄だが反骨精神を持った聖公会の牧師は、常に現場にいた。



現場から、アパルトヘイト国家の偽善を暴き、被害者をなぐさめ、解放運動の規範を問いただし、白人少数政権を孤立させるためもっと動くようよう西側諸国に迫った。アパルトヘイト政策を貫く政権を時には声高に、ナチスに例えることもあった。



南アフリカに民主主義が訪れると、ツツ氏はその倫理的権威をもって、白人少数政権の犯罪を暴く真実和解委員会の委員長を務めた。後年になると、かつて解放運動を主導したANC政権にも、同じ鋭いまなざしを向けた。



多くの南アフリカ国民が今日、ツツ氏が1人の人間として抱えていた勇気や、倫理的な怒りがいかに明瞭だったかを思い出すだろう。しかしツツ氏をよく知る人たちにとって、ツツ氏は一貫して、希望の声だった。



そしてその希望、その楽観主義こそが、あの人の特徴だった。トレードマークの笑い声と合わせて、世界は今後そうやってデズモンド・ツツ大主教を記憶し、たたえていくのだろう。





(英語記事 Obama joins tributes to 'mentor' Desmond Tutu





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